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王子様と私
【ファンタジー 官能小説】

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王子様と私3-2

それにしても、と私はフレイをちらりと見る。
前々から彼を教師とした彼女を私は可哀想に思っていたのだ。
フレイはとてつもなくスパルタである。美男だとかカッコいいだとか、そういう教えを受ける側の甘い気持ちを踏みにじるのがとても上手だ。
誰だって一目で彼に惹かれるが、ほとんどすぐにただの勘違いだったと気がつく。私は身を持って知っている。
私が心の中で勝手に同情していることを露知らず、年若い姫君は寂しそうに言った。

「実はエルさんを心配していたんです。城がばたばたしているでしょう?兄様も普段はもうすこし優しいんですけど…」
「……たぶん、ジゼル様が心配していることはひとつも起こっていません。安心してください」

わかっている。
彼は誰かに優しくする方法を知らないのだ。二十三年も生きてきて、たぶん国や民のことばっかり考えていたのだ。
最近なんとなくそれがわかってきた。
例えば、私の地元の話を聞きたがる。実はよく知らないのだと真面目な顔で言ってみせる。

「父様がしっかりしていれば、また違ったのでしょうけど」
「……」

なにも言えない私に、彼女は寂しげに零す。
透き通った横顔は決して涙を流さない。

「父様は後継者に兄様を指名しています。なのに、どうして争うのかしら。私は商人を大臣にするからこんなことになるんだと思うのです、お金と権力ばかり。どうしてフレイのような知識や知恵のある人が大臣にならないの、平和だからといって何をしてもいいわけではないでしょう?」

一気に言って、ジゼルはじろりとフレイを見るが、彼は曖昧に笑って答えなかった。
きっと彼女なりに鬱憤がたまっていて、どう吐き出せばいいのかわからないのだろう。自分の知らないところで姉兄が対立するというのは私が思う以上に嫌なものなのだ、きっと。

「……ジゼル様、元気を出してください」

はっとしたように、短く息をのんで、すぐに彼女はうなだれた。
小さな声でごめんなさい、と呟く。

「初対面のエルさんに……どうか、忘れてください。兄様には内緒でお願いします」
「わかりました。約束ですね」

私は心優しい姫君にできるだけ素直に笑ってみせた。


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