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菓子
【学園物 恋愛小説】

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菓子-4

「熱いから気をつけろよ」
「……」
「お茶菓子、作ってきたんだろ?せっかくだから出して欲しいな」
 圭君は楓の持っている包みを見て言った。
「だ、駄目よ。……これは」
 本当なら圭君の為に作って来たケーキだが、楓は何故だか首を横に振った。
 仕方が無いとか、ついでだからと言う理由で食べて欲しくないのだ。
「クラブの皆で食べるつもりだったんだろ?」
 首を傾げる圭君。
「だ、だって、二人きりでチョコレートケーキなんかあげたら、告白してるみたいだし(いや、そのつもりだったんだけど)」
「でも、皆に作ってきたんだろ?」
「な、何よ。そんなにチョコが欲しかったら、他の子にもらえばいいじゃない」
 口に出してから、楓は自分の言葉に驚いた。
 こんな事を言うつもりじゃなかったのに。
 見ると、普段は温厚な圭君の顔が凍りついている。
「好きでもない子からチョコレートをもらいたくないだろ」
「……えっ?それって」
 突然の逆告白に楓は驚いた。
「それってつまり、私の事が好きってこと?」
「あ、いや、まあ……」
 照れくさそうに頭を掻く圭君。
 何か夢でも見ているのか、それとも悪い冗談か。
 やがて何が起こっているのか理解できると、嬉しい筈なのに涙が込み上げてくる。
 そして、楓の口を突いて思わず出た言葉は。
「バカ、朴念仁」
「……」
「もぉ〜、この鈍感男!人の気も知らないで!私が今までどんな気持ちで悩んでいたと思ってんのよ!!好きなら好きって何で早く言わないのよ!」
「痛い!ちょっ、女が拳骨で殴るんじゃない!」
「何だってこんな朴念仁の事好きになったんだろ?私の百万倍悩めばいいのよ!!」
 涙をぽろぽろこぼす楓。
 圭はとっさに手首を捕まえると少女の体を抱きすくめた。
「朴念仁でゴメン」
 優しく唇を重ねる圭。
 強張った楓の体から力が抜けていく。
「しょっぱくない?」
「チョコより甘い」

終。


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