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『hope〜ある少年とお菓子〜』
【コメディ その他小説】

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『hope〜ある少年とお菓子〜』-1

僕――穂村達也(ほむらたつや)は空を翔けるかのごとく、地雷火字(じらいかじ)高校の廊下を走っていた。目的の物を見つけたからだ。

僕の目的――それは世界制覇! ではなく、世界平和! でもなく、学園制覇! でもない。たった一つ、女性にもてることだけ。ハーレムを作ろうなどは思っていない。ただイケメンが女性にもてるように、自分もそんな風になれたらいいなぁと思っている。

そして、たどり着いたのは校長室。そこに願いを叶えてくれるあるものがあるという。はやる気持ちを押さえ、扉をノックした。

『どーぞ』

のんびりとした声がした。「失礼します」とありきたりな言葉を言い、中にはいるとやはり校長が仕事をしていなかった。ここの校長は仕事をしないことで有名で、教頭である奥さんにいつも尻にしかれて、しぶしぶ仕事をしているという。

「おや、穂村君。どうしたのー?」

仕事をしない割に生徒全員の名を覚えていたり、親達からの人気が絶大なものがあったりする。何なんだこの高校は……。

「穂村くーん? 穂村ちゃーん? ほっちゃん? うーん、なんかおかしいなぁ。むっちゃんの方が良いのかなぁ。でもなー、なんかいやらしくなっちゃうしなぁ」

先刻からこの調子で僕の目の前でこれを繰り返してくる。しかし、これに付き合っているほど暇ではない。

「校長先生! お願いがあるのですが……」

「嫌だ! ほむっちゃんのお願いは断わる!」

お願いの願いも言ってないのに断わるか? 普通。しかも、ほむっちゃんって……。

「何でですか? 校長先生に迷惑を掛けることじゃないんですが?」

「とにかく嫌だ。むらっちゃんはボクの話を聞いてくれないから、嫌だ」

そもそもこの学校の朝礼や行事の時の話が長い。普通三十分前後で話が終わるのだが、この校長と生徒会長石須磨巴(せきすまともえ)の二人の話で、確実に二時間以上かかる。だから、聞かないのがむしろ――自分のなかでは、当たり前になっている。

「ぜっーたいむらっちゃんの言うことを聞かないもん」

あ、すね始めた。ったく、この校長、めんどくせぇー。

「わかりました」

 思わずため息を吐く。

「本当? ねぇ、本当だよ?」

「聞きます、聞きますから! 僕のお願いを聞いてください」

「なにかな?」

目をキラキラ? させてすりよってくる。ここまでくると教頭である奥さんは凄いとしかいいようがない。このおかしい校長を言うこと聞かせるようにするには至難の業だ。

「すいません、一回離れてください」

「おっと、ごめん、ごめん」

離れたことを確認すると、いよいよ本題へ。

「あの……、例のお菓子ありますか?」

「あるよ。ほらっちゃんたらいやらしいねえ〜」

肘で突いてくる。真剣にムカついてきた。落ち着け、落ち着け。平常心が大事だ。


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