AH! MY GODDESS ラストストーリー-7
『ベルダンディー……汝は森里螢一を夫し、健やかなるときも、病めるときも、その生涯を共に歩み、死が二人を別つ時まで変わらぬ愛を貫くことを誓いますか？』
そう言って螢一は、ベルダンディーをじっと見つめる。自分の涙腺は壊れてしまったのだろうか？ベルダンディーが、そう思う程に瞳から涙が溢れ出す……。そしてわななく唇は言葉を紡いだ。
『……誓います……。』
螢一は、にっこりと笑いベルダンディーの前に片膝をつくと、静かに頭を下げていく。頷いて立ち上がったベルダンディーはゆっくりと螢一の頭の上に手を乗せる。
『も、森里螢一……汝はベルダンディーを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、その生涯を……共に歩み、死が二人を別つ時まで変わらぬ愛を貫くことを……誓いますか？』
『…誓います…』
静かに…そして力強く、はっきりと螢一は答える。
『この……誓いの言葉を以って、女神ベルダンディーの御名において、ここに二人を夫婦と認める。では、誓いの口づけを……』
ゆっくりと立ち上がり、螢一はベルダンディーのレースを捲り上げていった。
そこに二人を祝福する者などいない……。賛辞の声も、暖かな眼差しも……。
(ああっ女神さま！より)
螢一はベルダンディーを見つめ、ベルダンディーもまた螢一を見つめている。今まで、あれほど口に出すのが恥ずかしかった言葉が、まるで呼吸をする様に自然に螢一の口から零れた。
『愛しているよ。ベルダンディー……。』
そして、互いを愛おしむように二人は唇を重ねた。
『本当に会うつもりなのか？』
魔界の門の入口で、ヴェルスパーはウルドに尋ねた。
『ええ、会わなくちゃならないの。』
精神統一をするように呼吸を整え、ウルドは呟いた。
『ワールド・オブ・エレガンス……』
まばゆい光りが弾け、やがてそれは人型を象（かたど）ると翼を持つ天使の姿になった。半神半魔の自分を象徴する様に、片側に純白の翼……対を成す反対側には漆黒の翼を持ち、強い意志を思わせる凜とした双眸を携え、壮絶なまでの美しさを放っていた。
『初めてあなたを呼び出した時、私酷いコト言ったよね。でも、再び出会えた時、凄く嬉しかった。今は、あなたを誇りにさえ思っているの。大切な……大切な、もう一人の私……。』
ウルドはゆっくりと歩み寄り、天使を抱き締めた。
『あなたは私だもの、どうして呼んだのか、何をしようとしているのか、もうわかっているわよね？』
天使は頷く。その瞳から力強さは消え失せ、淋しげな笑みを浮かべていた。
『そんな顔しないで……。いつまでも、あなたといたかった。いられるものだと思っていた。でも……』
天使は自分を映す鏡……。語り続けるウルドの表情は、天使と同じ顔をしていた。
『あの娘は天に背いてしまった。いいえ、背いてまでも自分の心に正直でいたかったのよ。私のたった一人の理解者……。私に畏怖する事なく、常に真っ直ぐに見つめてくれた。だから、私はあの娘を守りたいの。たとえ、もう会えなくなるとしても……』
いつのまにか、ウルドの声は涙声になっていた。そして、天使も泣いていた。