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二人
【二次創作 恋愛小説】

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二人-1

あの戦いから、既に二年あまりが経過した。俺は王位を受け継ぎ、ファティマの王となった。シグは相変わらず、口やかましく俺をまくし立てるが、本気で怒るつもりはないようである。そして、シグ以上の悩みの種がある…

「若ぁ〜」
「待て待て!まだ仕事中だ!」
「机にばっかりしがみついてないで、遊びに行こうよぉ〜」
「だから待てってば!」
マルーだ。暇になると俺の書斎に来ては、遊べとせがんでくる。
「約束したよね?」
キョトンとした表情で、俺の顔をのぞき込むマルーは、とても愛らしかった。
「…ってダメダメ!終わったらな!」
まだ仕事は山ほどある。マルーと遊んでいるほどの時間は、今の俺にはなかった。ションボリしながら部屋を出ていくマルーの背中が小さくて、寂しそうで、可哀想だとも思った。でも、その背中を抱いてしまえば、俺はマルーから、マルーは俺から離れられなくなってしまう。ぐっと堪えるのが精一杯で、情けなくなる。

 マルーの気持ちを受け止めてやりたくて、仕事を早く切り上げた。窓の外は夕日が沈み終えた後だったが、部屋を飛び出し、マルーを探し始めた。あまり部屋にいる人種じゃないから、いろんな所を走り回った。
「若?どうなされました?」
「シグ……そうだ!」
廊下でばったり会ったシグに、マルーの居場所を聞いてみた。案の定、城の隅にある木の下にいたとの情報を入手することに成功した。そして、シグにあることを頼んでおいた。
 木の前に着いた時、汗だくの自分に気付く。大切だから。ただそれだけ。
「マルー…」
「……若?」
俺を見る瞳にも、寂しさは現れていて、それでも心配した事が先に立ち、思わず怒鳴ってしまう。
「何やってんだ!」
「……っ!」
目を閉じて驚きが表に現れたが、俺は話を続けた。
「そんな…顔をしないでくれよ…」
「若?」
「お前には『若〜!』って言って、笑っていて欲しいんだよ……」
俺はマルーの横に腰掛ける。沈黙と静寂。それは互いを解り合える瞬間だったのかもしれない。
「ねぇ…若?」
「なんだ?」
優しそうな、いつもとは違う笑み。思わずドキっとする。マルーは俺の手を取ると、自分の腹に持っていく。
「若にはまだ…わからないかな…」
「何がだ?」
「…………」
突然黙り込むから、心配になる。その仕草が、やけに大人っぽい。
「おいマル……」
「動いてるんだ…」
「動いてる?」
「うん。お腹の中で、若とボクの赤ちゃんが……」
マジかよとも思った。でも、ここ何日か吐き気をもようしていたマルーの姿を思い出す。
「みんなね?赤ちゃんが出来たんだよって言って喜んでくれたんだ…」
まただ。また、瞳に光がなくなっていく。
「若は…迷惑だよねぇ……」
大きな瞳からは、大粒の涙がポロポロとこぼれ、俺に何かを訴えかけている様だった。
「ボクは…若が好きなのに……若は…ボクが………」
「迷惑だなんて…言わない。お前は俺の側にいればいい」
守りたいと思った。コイツだけは…守り抜く必要があった。
「若ぁ……」
俺の胸で泣くマルーの嗚咽を聞きながら、シグに頼んだモノを、今か今かと待っていた。しかし、頼んでおいた時間を過ぎている。やはりシグでも…。
<ドドォーン……パラパラパラ……>
轟音と共に、城の反対側の空には、大きな火花が飛び散った。
「ねぇ若!見てみて!花火だよ!」
ふと城の方を見ると、シグがガッツポーズでこちらを見ていた。瞬時に悟る。
(タイミングを図ったな…)
でも、サンキュ。シグ。
「綺麗だねぇ…」
「そうだな…」
俺には守るべきモノがある。国、民、そしてマルー。もう一つ、忘れてはいけない。二人の愛の証も……大切な、守るべきものなんだ……。


END


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