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風吹く道
【大人 恋愛小説】

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風吹く道-1

信じることが怖くて、私は倒れ込んでしまう。うしろから追ってくる数々の手。私はきっと逃げられないんだ。はっきり、理解した。足も手も動かない。何も声が出ない。誰も手をかしてくれない。叫べない。助けて、それすらもままならない。追ってくる数々の手。首に手が巻きつく。苦しい。誰か…。




じりり…。ガチャ。


またヤな夢。また寝れない。でも、バイトがある。講義がある。濃いブラックと甘い香水の匂いで目を覚ます。長い黒髪を書き上げてお風呂にお湯を張る。煙草の煙が朝のけだるさを運んでゆく。
疲れてるんだ。あんな夢を見るのは、きっと、そのせいなんだ。
最近ずっと大人の男の体を食べている。そのせいだ。一昨日は賢一。昨日は雄大。でも何より愛してる、のが、武志だ。今日、今夜、何週間ぶりかのデート。武志だけ、私の本気。
いままでの恋が捨てられていた、私を、拾ってくれたのが、武志。いままでは私が拾って育てて捨てられていた。結局あきてしまうんだ。みんな、みんなあきてしまうんだ。武志は違う。そばにいて安心したのもはじめてだ。抱きしめられて、抱きしめて安心したのもはじめてだ。武志は私がはじめて自分を素直に現せた人だから。
勝手に決めている。武志会えないから、私はあんな夢を見るのだ。と、。
実際そうだ。武志に会えないから疲れやすい。いつも寝てしまう。体が重い。どこかだるい。
あえると何かもどうでもよくなる。すごく心地よくて普段嘘でも笑うのに、何もしなくていい。
眠っているときに髪を撫でてくれるのが何より幸せなんだ。っ思う。
今日も私は、倒れながらも、求める。癒やしと信じることが出来る胸と、暖かい腕。私の名を呼ぶ彼の声を…。完


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