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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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伊藤美弥の悩み 〜初恋〜-2

――しばらくして、紘平は緑茶とお茶受けを持ってきた。
「お・ま・ちぃ」
 紘平は湯飲みに入った濃いめのお茶とお茶受けを、美弥の前に置く。
 お茶受けは、小ぶりの月餅だった。
「いただきます」
 美弥は一口月餅にかぶりつくと、緑茶を飲んで口中の甘みを洗い流した。
「ん〜」
 美弥が満足そうな声を出すと、紘平はにっこり微笑む。
「美味いか?」
「うん」
 無防備な笑みを見て、紘平は肩をすくめた。
 本当に、今の美弥は自分を『男』として認識していない。
 ほとんど誰にも知られないくらいに短かい期間とはいえ、一時期は恋人にまで進展のあった幼馴染み。
 美弥にとって自分はもう『過去の男』で、今は龍之介しか目に入っていないのである。
「近所の店でみっけた、俺のお気に入りや。美味いやろ?」
 むらむらと湧いてくる嫉妬を隠し、紘平はそう言った。
「うん」
 美弥は幸せそうな顔で、月餅を頬張っている。
 無防備が過ぎるその様子を、紘平はじっくり観察した。
 瀬里奈から探り出した話に拠ると、付き合い出してから一年程度は過ぎているという。
 当然ながら、すっかり女らしく発達したこの体全てを龍之介に預け、共に深い快楽を得ているはずだ。
 紘平個人の考えとして、体の付き合いがないプラトニックな関係で、あれ程の信頼関係が築けるとは到底思えないのである。
 体の恋愛もしているのならひょっとして、女の子の大切な部分だけでなくこの可愛い唇にも、龍之介のモノを受け入れているかも知れなかった。
 いかにも柔らかくて美味しそうなこの唇でねっとりしたキスを交わし、あの腕に抱かれては可愛い声で鳴き、龍之介に深い悦楽を与えている……。
「………………美弥」
 紘平の声の調子が少し変わったのに、夢中で月餅をかじっていた美弥は全く気付かなかった。
「ん?」
「ここ、五階やろ?周りに高い建物ないしけっこぉ見晴らしええねん。ちょいと見てみ?」
 紘平はそう言ってから立ち上がり、美弥を促す。
「へぇ」
 促された美弥は立ち上がり、導かれるままに窓際まで歩いていった。
 紘平が窓の脇に立ち、カーテンを少し開ける。
 少し開いたその場所から、美弥は顔を出した。
「わ」
 途端に唇から、素直な声を出す。
 紘平が言うだけの事はあり、眼下に広がる景色は確かになかなか見事な物だった。
「ふわぁ……」
 思わず見とれる美弥の手に、ふと何かがかかる。
「……え?」
 かかったそれは、紘平の手だった。
 事情を飲み込めないでいる美弥の体に、紘平の腕が絡み付く。
 紘平は美弥の手を片手で一まとめにすると、ぐいっと持ち上げた。
 そして服のポケットからハンカチを取り出して美弥の手首を戒め、窓ガラスに押し付けて固定する。
「無防備やなぁ、美弥」
 美弥から両手の自由を奪った所で、紘平は美弥の顔に手をかけた。
「ほんま、無防備や……ジブンが悪いんやからな」
 まだ事情が飲み込めていない様子の美弥の顔に、紘平は自分の顔を寄せる。
「……やっ!!」
 唇が触れそうになった瞬間、美弥はようやく事情を飲み込んだ。
 一声叫ぶなり顔を逸らし、紘平のキスを拒む。
「キスは嫌か?まあええ、時間はたっぷりある……」

 はくっ

 顔を背けたせいで差し出される形になっていた耳を、紘平は優しく噛んだ。
「っ……!」
 びく、と美弥は肩を震わせる。
「何や……耳、ええのんか?」
 紘平は舌を尖らせ、耳を蹂躙し始めた。
「やっ……嫌っ……!」
 龍之介のそれとは違う舌が、耳を這い回る。
「紘ちゃっ……止めてっ……!」
 身悶えする美弥に、紘平は囁いた。
「駄目や。せめて……せめて一回オ×コせんと、もう治まらんで」
 熱い舌が、耳を舐めずり回す。
「あぅ……!」
 ちゅぴ、ちゅぴ、と音を立てて、紘平は舌を耳から首へと滑らせていった。
「やめっ……う、あふぅ……!」
 心は嫌だと拒否するのに、体は紘平の愛撫に似た蹂躙を受け入れる。
「何でっ……こ……高遠君……」
「!」
 言葉での拒否に、紘平は蹂躙を止めた。
 美弥が初めて、自分を『紘ちゃん』ではなく『高遠君』と呼んだのである。
「…………あかん、止められへん。こないなええ声で鳴くくせに、俺を拒否すんなや」
 だが言葉の拒否は、遅きに失していた。
 紘平は首筋に舌を這わせながら、片手で美弥の胸に触れる。
「この体全部、龍やんに触れさせてるんやな……」
「やっ……!」
 美弥は精一杯の抵抗をするが、紘平は容赦をしなかった。
 抵抗できないよう美弥を抱き締め、ベッドまで連れて行く。
 美弥をベッドに寝転がすと、紘平は上半身の服を剥ぎ取った。


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