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エッグスタンド〜One party〜
【幼馴染 恋愛小説】

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エッグスタンドU-2

「…沙那を何で“あの娘”って呼ぶの?」

 それだけをオバさんに伝え、オレは勝手知ったるアイツの部屋へと土足で上がり込んだ。

「居るか!」

 ノックもせずにドアを開けて部屋に入ると、アイツは机とベッドの間で外を眺めていた。

「やっぱり来たんだ…」

 オレを見るなり、沙那は薄い笑顔を湛えた。そんな態度がなおさら腹が立つ。

「オマエ。この家に居ない事になってるぞ」

 オレのぶっきらぼうな問いにも、沙那は薄い笑顔を崩さない。

「あ、そうなんだ…」
「そうなんだ、じゃねえだろ。オレの携帯に訳分かんねえ電話しといて…」

 それは、先刻、トイレに行った時だ。通話ボタンを押した携帯からいきなり歌声が流れた。


 …空を舞う鳥達のように、自分はいつ自由になれるのでしょう。

 彼らは翼を持ち、広い空の果てから果てを自分の意志で飛び交っています。

 すべてのしがらみを退け、遠く々見渡せるほどに飛べるのは何時ですか。

 それとも、舞い立つ日はこないのでしょうか…

 自分の心境を歌にこめたつもりだろうか。それとも、何かのサインなのか。
 とりあえず思いは成功したハズだ。聞かされたオレは直ちにここへ来たのだから。

「あ…そういう風に聞こえちゃったんだ」

 沙那はクスクスと笑って嬉しそうだ。おそらく、思惑通りだったのだろう。

「それ以外にどう聞くんだ?突然、電話かと思えば意味深な歌詞を並べるし…」
「別に…ただ、思い浮かんだから薫に聞かせたかもしれないよ」
「だったら有難いがな…」

 …そうじゃないのが分からない程、短い付き合いじゃない…

「ねえ、薫?」
「なんだよ…?」
「私って、何故、産まれたんだろうね?」
「産まれたくなかったのか?」

 問いかけの言葉に、コイツは答えない。オレに対しても心を閉ざす。

「なあ、沙那」

 沙那は、相変わらず窓の外を眺めている。その表情は、昨日の屋上から眼下を眺めていたのと同じだ。

「沙那!」
「ん〜?」

 再び向ける顔は、相変わらず薄い笑顔を浮かべている。


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