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トラブルバスターズ01
【SF 官能小説】

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トラブルバスターズ01 [二章]-1

銀河世紀2030年
世界標準日8月20日

新聞・紙媒体の情報という物は何時の時代になっても無くならない物だった。
コンピューターネットワークを流れる電子ドキュメントなどに比べれば、印刷や輸送の時間がかかり利用者の手に渡るまでに多大な時間を要し、手に届いた後もその保存性や持ち運びのし易さにしても不揮発性半導体メモリに遠く及ばない。
それでも、どれだけ、技術が進歩して優れたシステムが現れても紙媒体は無くならないに違いない。
週刊誌だの新聞だのそういった類いの物は特に、
なぜなら、ユーザはいつの時代も人間なのだから。

「いらっしゃいませ。15点で32ドルなります」
3冊の新聞と幾つかの食料品を無言でレジに突き出した男に店員が定型文を返した。
男は料金を渡し商品を受け取るとコンビニを出た。
この男…レイ=フリーザはある車両へと向かった。
「開けてくれ。」
無骨な軍用の装甲車にコンテナを連結させたような車両に呼びかける。
ガチャ
ひとりでにドアが開き、レイを迎え入れる。
『食糧調達お疲れ様です。レイさん』
「あぁ」
迎えたのは人ではなく。無機質なレンズの目と電子音の声を持った、台に取り付けられた丸い物体だった。
彼(彼女?) の名は [エド] 。
もちろん、こんな姿形をした人間は居ない。
半導体や有機素子で作られた、人工知能(AI)だ。
AIは西暦1956年にアメリカで提唱されて以来多種多様な研究を経て、人類が宇宙へと進出した銀河世紀になった頃には、様々な分野で利用され始めていた。
「ミリィは昨日の店を見に行くと言っていたから居ないとして、バーニィはどうした?」
『バニングはコンテナの方で自分のパワードスーツの調整をしているようです。呼び出しますか?』
「いや、必要無い」
そう言うと助手席に腰を掛けて新聞を読み始めた。
地方紙には大きく[白昼の喫茶店大爆発!!テロリスト潜伏か!?] と書かれた見出しがあった。
(また、犯罪者扱いされるだろうな。動き難くなる)
とレイは表には出さずに心の中で重く溜め息をついた。

***********

昨日のあの銃撃戦が嘘のように静まり返った街の一区画。
あの時の警察が着いてから、この区画には「KEEP OUT」や「進入禁止」と同じ意味を持つ様々な言語が刻印のされた黄色いテープが張り巡らされ、一般人の立ち入りを拒んでいた。
パワードスーツを着込んだレイを不意打ちながらも圧倒した狙撃手が陣取っていたビルの屋上。
今、普通の人が見たとしても屋上には誰の姿も見付ける事は出来ない。
しかし、確かに彼女は確かにそこに居る。
言われてから、注意してよく見ればようやく気付く程度の、風景の歪みがそこには居た。
大気の歪みは、ビルの端へと歩いて行く。
電磁波迷彩と呼ばれるアクティブな迷彩システムだ。
電磁波迷彩の奥で彼女が見下ろす先には小規模な荒野が広がっていた。
「ずいぶんと…さっぱりしたものね」
迷彩ヘルメットの中で呟く。
まるで巨大隕石でも落ちたかの様に―。
そこに在った建物は砕かれ、大地は抉り取られていた。
それよりも、大きな形を残している壁だったものに問題があった。
『Sentral-Dome//UT2130』
人の血のように赤いペンキで大きく書かれたその文字はあの男が書いたものであると直感的に確信できた。
しかし、このメッセージが、果たし状代わりなのか罠への誘いかどちらかは判らない。
少なくとも、和解などの考えは持てない雰囲気は醸し出していた。
どちらにしても、今ここで急いで判断する必要はミリィには無い。
(二人はどう思うかな?)
他に見るものは無いと判断したミリィは文字通り、風景に紛れその場から姿を消した。


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