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依頼者
【サイコ その他小説】

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依頼者-1




○月×日 2人は図書館へ勉強しに向かった。時間は休日のお昼なので、人もそこそこ多かった。それでもぽつぽつとは席が空いていた。孝弘と美玖は2人でその中の二つの席に座りこんだ。孝弘は数学の教科書とノートをとりだした。美玖もそれをみて数学の勉強道具一式取り出した。そこから2人は、教え合いながら勉強に取り組んでいた。
二時間まではならなかったが、それに近い時刻に美玖はトイレに行った。孝弘も、少し休憩しようと背伸びとあくびを同時にし、そのすぐ後にジュースを口に運んだ。そして、飲み終わったジュースをカバンへ戻そうとしたそのとき、ふとある本が目に入った。特別目立つわけもなく、なぜそれが目に入ったのかと聞かれれば、返答に困る。そんな普通の本なのに、引き寄せられるように目がとまった。見れば表紙にはかわいいぞうさんの絵が描いてある。題名は載ってない。不思議だなと思いながら、やはりその本を開いた。一ページ目、二ページ目には、誰かの名前らしきものがびっしり書き詰められていた。三ページ目をめくると、その途中くらいまで名前が載っていた。少し気持ち悪い感覚を覚えながらも、好奇心が勝り、ページをぱらぱらとめくった。しかしそこには一面真っ黒なページが載っているだけだった。
『なーに見てんの?』
と、美玖が覗き込んできた。
『いやさ、この本変だと思ってさ。なんか、名前がびっしり載ってるし、かとおもえばあとは真っ黒になってるし。なぁ、変だと思わねぇか?』
『確かに変だと思うけど。でも、変に関わったりしない方がいいよ。』
『いや、でもさ、気になるじゃん。』
孝弘は、めちゃくちゃ好奇心旺盛な無邪気な子供みたいに、目を輝かせていた。
『何か、怖いんだけど。』
美玖は、嫌な予感がしていた。昔から言い出したら止まらないタイプだから。
『なぁ、調べて見ようよ。』
孝弘は相変わらず興味津々。
『嫌な予感しかしないから、絶対にやめた方がいいと思うけど、、、、、孝弘が聞くはずないしね。』
『よく分かってんじゃん!』
美玖は一つため息をついてから、
『で?どうすんの?』
『それなんだけどさ、まずこの名前書いてあるのが気になるからさ、この名前調べて見ない?』
『わかった。じゃあそっからね。』
『高岡健治さんは、、、、、行方不明!?まぁいっか。次は、坂本六郎は、、、、、、これも行方不明かよ!?おっかしいなー。』
ただの偶然だと分かっていながらも、かなり不思議に思った。そして、調べていくにつれその思いは強くなる。なぜなら、書いてある名前の人は、全て行方不明となっており、始めに書いてある順番から、きちんと順々に失踪している。孝弘は、正直このときから怖くなり始めていた。がしかし、ここで怖くなったから止めるなんて言えるわけもなく、美玖が止めてくれるのを期待しながら調べ続けていた。でも、その思いもむなしく、全然止めてくれる気配は無かった。
さすがに、もう良いだろうと言うことで、何人目かでストップした。孝弘は心底ほっとしていた。と言うより、もう関わりたくなかった。嫌な予感がしたから。でも、なぜかわからない。何故か分からないけれど、四六時中あの本のことばかり考えている。孝弘は、変に深入りしたせいで、あの本が忘れられなくなっていた。そして、いつしかまたあの図書館へと向かい、本を開いたのだった。
孝弘は本を開き、最後のページを始めて見た。すると、そこには、
「国が決めた定め 国が決めた掟 これひらき者は 選ばれし者 選ばれし者の名 やがて これに刻まれん」
よく意味が分からなかった。でも、これを開いたことには間違いない。何かが起こる。何かが。
孝弘はまたぞっとした。寒気がして、身震いさえもした。そして、このときに初めて後悔したのだった。


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