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夜明けの晩に
【大人 恋愛小説】

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夜明けの晩に-1

愛する人の腕の中で目が覚める。
きっと、女の人が一番幸せを感じる瞬間。
ゆっくりした寝息。もう一度目を閉じて呼吸を合わせた。
眠っている間、感じていたはずの暖かさ。
覚えてない自分がなんだか悔しい。
カーテンから光が漏れてる。今日は、晴れ。
いつからだろう。晴れの日が嫌いになったのは。
朝なんてこなきゃいいのに。そう思うようになったのは。
太陽は私と彼を許さない。この幸せを罪悪感に換えてしまう。
どんどん欲張りになる私を決して許さない。
話をしてるだけ。ご飯を食べに行くだけ。少し遠くにでかけるだけ。
そんな言い訳の積み重ねをして、自分の気持ちを隠した。
一緒にいて。キスして。抱きしめて。私だけみつめていて。
溢れていく想いが涙に変わる。
頬に触れた暖かい手。ただ静かに。
ゆっくり目を開けると、小さくて可愛い目が私を見てる。
「…どうした?」
笑顔が少しだけ困って見えるのは涙でぼやけてるせい?
「なんでもないよ」
「そう…」
目尻のしわが深くなった。
困らないで。心配しないで。大丈夫だから。
変なの。あなたの前で泣いてばかりだったのにね。
嫌なことあったらわがまま言ってまで一緒にいた。
「泣いていいのに」
ぎゅってきつく抱きしめられると、そうしてもいいのかなって思う。
でも。
「ごめん」
言わないで。一番聞きたくない。約束なんてほしくない。
あなたに帰る場所があることを、私は止めない。
私の存在があなたを苦しめているのがつらい。
私はいっぱい幸せもらってるんだよ。暖かくて暖かくて泣けちゃうくらい。
「泣かないから謝らないで」
私にはそういうのが精一杯で。

そばにいてくれること。抱きしめてくれること。
朝まで一緒にいたいと言うこと。
それがどんなにわがままか、ちゃんとわかってるから。
今だけ。もう少しだけ。増えていく言い訳。
あなたの掌の上に、私の掌を乗せて。もう一度目を閉じる。
私の気持ちを、たった一人許してくれる人。
太陽も神様もあなたを許さなくても。私があなたを許してあげるから。
ねぇ、届いてる?
冷たい指先が暖かさで包まれた瞬間。
あなたの唇が、私に夜を連れてくる−。


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