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「保健室の小さな秘密」
【教師 官能小説】

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想いの輝く場所(後編)-11

「目が笑ってないわよ」
私の一言に、
「バレたか〜」
と、にっこりいつものように笑って、部室の外に置かれているベンチに腰掛けた。
先程の悠の有無を言わせない笑顔のせいか、さすがに追いかけて来る生徒はいなかった。

「ほんと、気の強い子ね」
少し赤くなっている悠の足首に冷却スプレーをかける。
「だろ?あんなんだからこっちだって気付きやしな…いたっ」
最後の方はもごもごした悠の足首を叩く。
「はいおしまい」
「…ありがとうございます」

立ち上がろうとしていた悠の側に戸田君が走り寄る。
「悠、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。あ、そうだ健介」
軽く足を振って悠が答えた、すぐ後だった。
ぐいっと白衣の袖を引っ張られたと思ったら、肩を抱かれ…。
「え……?」
戸惑う私と。
これでもかと言わんばかりに目を見開いている戸田君に向かって、悠はいつもの調子で、
「黙っててごめん、この人がオレの彼女」
悠は小さな声で、紹介…してくれた。

「はあああああ!?……えええええ!!??」
戸田君の盛大な叫びが、春というにはまだ早い透き通った青空にいつまでも響き渡っていた。




―――それから数年。
朝早い保健室で、仕事前に一杯の紅茶を飲んでいると。

保健室に続く廊下に足音が響いているのが聞こえた。

「…?」
こんな時間に誰がこんな所を歩いているんだろう。不思議に思い立ち上がって振り向くと。

「おはようございます。教育実習で今日からお世話になります、英語担当の雨宮でーす」
「……」
「やだなぁ、朝からその冷たい視線。会いたかったよ、奏子」
近寄って来てぎゅうっと抱きしめる。

「ちょっ、さっきまで一緒にいたでしょ!離れて離れて!」

悠は教職を含めた英語に携わる仕事がしたいと英文科に進んだ。
そして今日から二週間、母校である静涼高校で教育実習をするのだ。

私の家からの方が学校に近いし、初日は遅刻したくないから、と反対を押し切って昨晩泊まったくせに。

「何でよりにもよって…」
ブツブツ言う私に、誰もが見惚れる程の爽やかな笑顔を浮かべて、
「またここで会えるなんて運命感じない?」

…よく言うわよ。


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