投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 248 やっぱすっきゃねん! 250 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VB-14

(…い、急げ…)

 そこから駐輪場へと向かい、自転車に荷物をくくり付けると職員室へとダッシュした。

「…す、すいません…遅くなりました」

 息を切らせて中に入ると、すでに直也は来ていた。佳代は、そろそろと職員室の中を進み、直也のとなりに立った。

「ヨシ、これで揃ったな」

 永井は、いつになくにこやかな顔で2人に話し掛ける。

「明日、試合前のアップを終えたら、おまえ達2人で光陵高校に行って来てくれ」

 “光陵高校”と聞き、直也の顔が歪む。が、永井は構わず話を続けた。

「藤野コーチが送って下さるから、そこの野球部の練習を見学してくるんだ」
「監督!それ、本当ですか!」

 高校の野球部の練習を生で見れるという事で、佳代は浮かれてしまった。
 光陵高校といえば、過去2度の甲子園出場、県大会では常にベスト8という強豪の県立校だ。

「もちろんだ。野球部の監督さんには、お願いしてあるから…」
「うわぁ!ありがとうございます」

 飛び上がらんばかりの嬉しさをみせる佳代に対し、直也は、黙って俯いていた。




 夕闇迫る中、2人は職員室を後にした。
 佳代は、嬉々とした表情で駐輪場へ向かう足取りも軽やかだ。

「…そんなに嬉しいか?」

 そばを歩く直也は、ふてくされた顔で訊ねる。

「アンタ嬉しくないの!アンタの兄貴や山崎さんがいる野球部の練習が見れるんだよ!」

 佳代には、逆に直也の考えが分からなかった。

「…オレにゃ他人の練習なんて見てる余裕はねぇよ。まして、兄貴なんて…」
「ナオヤ…」

 この、ひと月あまり。まったく勝てないばかりか、ひどくなる一方の自分。練習の中で試行錯誤を繰り返すが、未だ何も掴めない。

 それは闇の中を彷徨っているようだった。




 翌日。

「さ、着いたぞ」

 一哉のクルマで佳代達が訪れたのは、青葉中から20キロほど北に進んだ場所にある光陵高校から、さらに2キロほど先の丘の頂上にあるグランドだった。

 朝の全体練習を終えた後、一哉が佳代と直也をクルマに積んで連れて来たのだ。

 クルマを降りた3人。少し離れた場所の駐車場にまで、威勢のよい声が聞こえてくる。

「このグランドは町立なんだが、10年前から町の好意で貸してもらってるそうだ」

 3人はグランドへ向かい、金網フェンスに設けられた入口前で帽子を取り、一礼すると中へと入った。
 バックネット裏から1塁側に歩みを進ませると、ベンチに陣取って、ジッと部員達を見守る数人の指導者達の姿があった。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 248 やっぱすっきゃねん! 250 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前