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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VA-2

「回れぇーー!」

 3塁コーチャーが腕を回した。ランナーは3塁を蹴った勢いのまま、円を描いてホームへ突入する。
 レフトの足立は、前に突っ込みながら打球を掴むと思い切り腕を振った。ボールはワンバウンドして達也のミットに収まった。滑り込んできたランナーをタッチしたが一瞬遅かった。

「セーフ!セーフ!」

 主審が手を広げてコールする。

「クソッ!」

 その時、乾が叫んだ。

「サード!」

 ヒットを打ったランナーが、2塁を蹴っていたのだ。達也は慌てて3塁へ投げたがランナーは余裕でセーフだった。

 ヒット1本で1点。そして今だノーアウトでランナー3塁。

「何を浮足立っとるんだ…」

 永井はタイムを取ると、伝令に稲森を向かわせた。マウンドに内野手達が集まる。

「監督からは、“浮足だつな。緩慢なプレイに気をつけろ。いつものおまえ達の力を出せ”だ。
 本当にどうしたんだ?バタバタしてるぞ。端から見てると…」

 稲森は笑顔を作って声を掛ける。が、誰ひとり笑う者はいなかった。

(やばいな。初試合だからって入れ込み過ぎだぜ…)

「とにかく、ワンプレイを大事にな」

 稲森はマウンドを去った。内野手達は、言葉を交わすことも無く守備位置へと戻っていった。
 その後、3、4番を外野フライに打ち取った。2点は与えたが、達也には、直也が立ち直りつつあると思えた。


(なんてデカさだ。ホントに中学生か?)

 バッターは5番。180はある長身に筋肉質な身体は中学生離れしている。彼は左打席に入ると、ゆっくりと地面を掻いた。

(懐が深そうだし、このリーチなら外にも付いてくるな…)

 達也の頭では内角高め、外角低めの対角線で攻めて勝負球を内角スライダーと考えた。
 1球目、外の低め。直也は頷き腕を振った。

「ストライク・ワン!」

 2球目。サインは内角高めへのボール。直也はワインドアップに構え投球動作に入った。
 腕を振ろうとした時、1番バッターの事が頭をよぎった。

(なに!)

 達也は我が目を疑った。それは内角を攻めていない棒球だった。
 バッターが強く振り抜いた。カーボンバット特有の、低い打撃音を残して打球は高く舞った。
 ライトの田畑は、目で追いながら全速でバックする。しかし打球は、その遥か後方にある外野ゾーンの向こうでバウンドした。


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