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『お宝は永久に眠る』
【ファンタジー 官能小説】

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『お宝は永久に眠る』-4

「ふぅ、あ、はぁ……ぅうんッ」
 荒い息と巧みな舌遣いがジェイドの口内を混沌へと導く。
 舌に溢れた唾液をお互いに舐め合い、息も絶え絶えに舌を絡ませ合う。もう初めての時のように拙さなど残らない口付けだというのに、なぜか昔のことを思い出してしまう。
 初めて行為に及んだのも、誰かが来るかも知れない学園の図書室だった。奥まった書庫の本棚に隠れ、最初は唇を重ねるだけの口づけをした。
 メニールが歴史書を探しに行くのを手伝おうとしただけなのに、彼女は入り口にある書籍など目もくれず奥へと進んでゆく。その時に、気付くべきだったのだろう。
『どこを探すつもりだ?』
 そう問いかけたジェイドに、振り向いたメニールは開口一番に問い返してくる。
『私は博識な人間だと思うか?』
 と。
 ジェイドには、それがどういう意図の質問なのか分からない。けれども、メニールの知識は大人のそれを遥かに凌駕していることを理解していた。
 だから肯いた。
『いや、違うな。確かに私はたくさんの文献を読んで、様々なことを知っている。しかしな、私にだって分からないことも、私が知らないことも、世界にはまだまだ残ってるんだ』
 メニールが否定するように、彼女でさえ未知なる存在は幾多も残っているだろう。
 それでも、メニールが持つ膨大な知識を引き合いに出せばそれらの未知と劣る劣らぬ。そうなると、彼女の台詞が謙遜にも聞こえる。
『謙遜なんかじゃないさ。現に、今も一つ私が理解していないことがある。何だと思う?』
『……探している歴史書の場所か?』
 メニールの問いに、ジェイドは深く考えず冗談めかして答えた。
 そして、すぐさま合否と答えが返ってくる。
『外れだ。果たして、愛とは何だろうな』
 臆面もなくメニールが言うものだから、ジェイドは顔を顰めながら口を噤む。その隙にメニールがジェイドを本棚に押し付けるようにして体を寄せ、唇を奪う。
 あの時も、今も、主導権“イニシアティブ”を取ったのはメニールだ。こうして動けないジェイドに、赤褐色の髪を絡めながら唇にキスをする。
 幾ら拍子をつかれたとは言え、メニールは女の膂力とは思えない力で拘束してきた。深く、この三年間の全てを取り返そうとしているかのように、深くジェイドの口の感触を味わう。
 だが、いつまでもやられっぱなしと言うのは性に合わず、
『愛というのは、こういう気持ちを言うのアッ……』「どうだ、少しはやる気にナッ……」
 唇が離れ最後まで言葉を紡ぐよりも早くメニールと位置を反転させる。
「同じ轍は踏まない奴だと思っていたが、こういうことになると昔の失敗も忘れるんだな」
 主導権を奪い、机に押し倒したメニールを嘲る。
「ず、ずるいぞ……。三年間も放っておかれた仕返しぐらいさせないか」
「お断りだね。三年間我慢してたのは、お前だけじゃないんだ。大体、どうして俺に拘る? お前ぐらいの女なら、別の男を掴まえるぐらい簡単だろ?」
「褒め言葉として受け取っておきたいが、私のような捻くれ者を好いてくれる男なんてそうそういるものじゃない。それに、私が知った愛というものは欲望のままに行うものではない」
 机に押し倒されたメニールが、ジェイドの下で笑う。
 そう言われて、ようやく気付くことがあった。
 待ち続けていたのは自分だけではなく、彼女もずっと自分を待ち続けてくれたのだ。そして彼女は、一度愛した相手から他の誰かに乗り換えるほど尻軽ではないということだ。
 この三年間、何度もメニールを疑った。一度は失敗した試験も、メニールなら次の機会に合格できるはず。なのに彼女は、二度と試験を受けることなく別の道に進んだ。


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