投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

地図にない景色
【初恋 恋愛小説】

地図にない景色の最初へ 地図にない景色 6 地図にない景色 8 地図にない景色の最後へ

地図にない景色-7

うん?、と振り返る彼。だけど、咄嗟に呼び止めてしまったあたしに、続けるべき言葉は見つからない。
嘘だ…。本当はいっぱい、聞きたいことがあった。 名前とか年令とか、何で助けてくれたのかとか、また会えるのか、とか…。
だけど、振り返ったそいつの顔を見たら、なんでか胸が苦しくなって、そういった質問はどっかに飛んでいっちゃって…、あたしは夕日のせいばかりではない、何故か真っ赤な顔を俯かせることしかできなかった。
(まずいよ、何か言わないと…!)
そう焦るたびに、肝心の言葉はフワフワ宙を浮くばかりで、あたしの口からは何一つ、出てこようとはしてくれない。
その時だ…。

「ああ、そういえば…」
ふと、男が思い出したように呟いたかと思うと、ガサガサ、何かを探すような音。
「これ、渡すの忘れてた」そう言って、彼が差し出してきたのは、あのコンビニのロゴが入った小さなビニール袋だった。
要領を得ないあたしに、彼は、
「君が盗もうとした商品が入ってる。君にとっては嫌な代物だろうけど、まあ、自業自得ということで」
と、あたしの手にその袋をしっかりと手渡した。
 それを見てようやく、当初の目的を思い出した、あたし。
「あのさ…」
「うん?」
「なんで、こんなことしたの?」
あたしの言葉が簡潔すぎたのか、男はきょとんとしている。
 だから、もう一度言い直した。
「なんで、あたしが盗ろうとした物まで買ったりしたの?気づいてないかもしれないけど、あんた、相当変な目で見られてたよ?」
「…だろうね」
「わかってたの?」
「うん」
事もなげに、頷いた。
「わかってて、なんで?」「なんでだろうね。自分でも不思議」
 本当にわからないのか、男は大袈裟なまでに首を傾げてみせる。
 その仕草を呆れ混じりに眺めながら、あたしは気づいたままを口にした。
「…あんたってさ」
「うん?」
「変わってるって、言われるでしょ?」
「……」
 押し黙る、彼。
「どうなの?」
 問い掛ける、あたし。
 やがて、やれやれ、というように、彼は答えた。
「…言われる」
やっぱりね、と心の中で言った。
「でも…」
「えっ?」
「年下の女の子に言われたのは初めてだな」
「っ…!」
男はそう言って苦笑いらしきものを浮かべたが、あたしは途中までしか、その表情を直視することができなかった。
顔が…熱い。
それどころか、体の中で火が点いたみたいに頭の天辺から爪先まで、例外なんてないみたいに熱かった。胸は早鐘を打つみたいに、ドキドキいっているし、その音が頭の中にまで響いている。
まるで心臓が喉元のすぐそこまで、はい上がってきているみたいだった。
なんだか、変だ。
こんな風になることなんて、今までのあたしの人生の中で、一度だってなかった。そう。彼のあの笑顔を見るまでは…。


地図にない景色の最初へ 地図にない景色 6 地図にない景色 8 地図にない景色の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前