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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉中編-16

「アバサ、この子は私の子です。私の全ての力をこの子に授けました。」

環明の体が透明度を増していく。それに全員が気付いていた。

「セリナをお願い。せめてこの子だけでも幸せになれるように。お願い、アバサ!」

やがて光は消え、それが彼女が残した最後の言葉になった。

しばらくは彼女の姿を探すように、さっきまでいた宙を見つめたまま二人は動けなかった。しかしアバサの腕の中、静かに眠る形見はアバサを現実へと引き戻していく。

アバサは振り返り、レプリカと目線を合わせて口を開いた。

「リュナ、今から言う事をよく聞いて。」

忘れていた太古の記憶は環明の姿を見た瞬間にレプリカも取り戻していた。ただならぬ状況も察知している。

アバサはさっき環明がしていたように、自分の手をレプリカの額に当てた。その瞬間に環明の記憶がレプリカの頭の中に入ってくる。

「この子は環明様の子。私達はあの方の望んだとおり、この子を守っていかないといけないの。」

レプリカには支えきれない程の様々な感情が流れてくる。たまらずレプリカの瞳から涙が溢れだした。どれほどの苦しみか、どれほどの無念か、計り知れない想いが小さな体を駆け巡る。

「ここはもうオフカルスじゃない、あそこは古えとなってしまった。私達は古の民、それでも今を生きなくてはいけない。」

自分達が持つ記憶をセリナに渡す必要はない。何も知らないところで、何にも縛られる事無く自由に生きさせてあげよう、それがアバサの決意だった。

風の力を受け継いだセリナが争いに巻き込まれないように、全力で彼女を守ることこそが環明の望みを叶える事だとアバサは続けた。

「いい、リュナ?この子は環明様の子。絶対にお守りするの。」

再度繰り返される言葉をレプリカは全て受け入れた。それを証明するようにレプリカは微笑み告げた。

「全てからお守りするのであれば、お祖母様。私の名をセリナ様に。」





「オフカルスの全てを取り去り、新しく生まれ変わるために私の名を差し上げました。」

レプリカは懐かしむような落ち着いた声で、遠い目をしながら話していた。

「ウィルサを名付けたのはアバサです。」

話の終わりを迎えてもカルサは黙ったまま、レプリカを見ていた。まだ話は終わっていない、確信がある。

「私はセリナ様は環明様の子ではないと、思っております。」

鋭い目付きになった。言いたい事はカルサにも伝わっている。

「アバサの言葉か。」

カルサに同意するように頷いた。再度繰り返された言葉、環明の子供だと、まるで植付けるようにも取れかねない程だった。


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