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「例え君が何者でも」
【コメディ 恋愛小説】

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「例え君が何者でも」-4

「有介」

「ん?何?」

私は有介の前に立つと両手を広げます。

「来なさい!!」

目を点にして驚く有介。

「オレ、幽霊だよ?」

「有介なら!怖くないです!!」

呆れたように「全く…」とため息を吐いたけど、すぐに微笑んでくれました。
有介も一度バッと両手を広げるとそっと私を抱き締めました。

「ぎゅう〜っ♪」

「ひっ」

体がビクッとなりましたが、ぎこちないけど私も有介の背中に手を回しました。
私との身長差があるみたいで少し丸まっています。

「オレね、姫代のこと気に入っちゃったんだよ。写真見て、心ぎゅって捕まれて…ごめんな。オレ、幽霊だから怖がらせちゃって」

私は壊れたロボットのように首をブンブン降りました。

「わ、私はっ。例え有介が何者でもっ、有介の存在を認めます!だから…そんな顔しないでください…」

「ありがとう」

私、気付きました。怖いんじゃない、ときめいてるんだ。
どこからだか分からないけど、さっきから鳴り響いてるこのドキドキは恐怖じゃなくときめきに代わっていました。

「姫代に会えただけでオレ充分だ。オレ、行かねぇと」

体を離しながら有介は言いました。私はただ頷くことしか出来ません。

「じゃあな、姫代。元気でな」

有介は軽く手を振り、カーテンの掛かった窓に歩いていきました。

「有介っ!」

名前を呼んだその時、有介は私を見てニコッと笑うと勢いをつけカーテンに飛び込みました。
もとから何も無かったかのようです。慌てて揺れもしないカーテンを開き、窓を開けてベランダに飛び出すと、眠った街が広がっていました。もちろん、有介の姿はありません。
ひゅっと冬の風が頬を撫でて行きました。なぜか温かく感じ、これは有介が撫でたんだと思いました。

「バイバイ」

星の輝く夜空に呟きます。
私は夢を見ていた…。この数時間は甘い夢だったんだ。
少し胸が痛むのを感じながら、私は部屋に戻りました。


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