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「濡れた手紙」
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「濡れた手紙」-1

「先が見えないよ…」

俺とお袋を乗せた潜水艦は、
海底に辿り着いた。

視界は真っ暗で、
殆ど先が見えない…

海底には、
転覆した船の残骸。



数日前…

親父とお袋は喧嘩をした。

お袋は実家へ帰ってしまった。

親父の仕事は漁師。

漁をやるには天気が大切だ。

親父は気象庁より正確な天気を、
長年の経験で予測する能力を持っていた。

明日は天気だから漁に出る。



翌日の早朝。



親父が一人ご飯を作っていた。

今日は親父とお袋の結婚記念日。

お袋と喧嘩しなかったら
今頃、家族旅行の予定だった。

親父は一人ご飯を食べ、
漁へ出掛けて行った…

出掛けて間もなく、
親父の仲間が家に来た。

「源さん居るかい?」

漁に出たと伝えると

「なんだって!?
今日の海は危険だ!!」

「源さんは知ってるハズなのに!!」

空が急に暗くなり、海は荒れだした。

そして、物凄い雷雨となり、
海は荒れ狂った。

よく朝、親父の遺体が上がった。

『親父〜!!』


…海底を進む潜水艦…

「あれだ!!」

転覆した親父の船を発見。

「ライト点灯!!」

浮かび上がる親父の船。

ダイバーが船内に入る。

そして、船内から何かを…


それは、親父からお袋へのプレゼントだった。

そしてグシャグシャに濡れた
家族の写真と手紙…。

『明日で結婚して20年だな。
記念日をお前は忘れてるだろ?
いつもの事だよな…
そして…、この前は、ごめんな…』

「バカ〜!! 何で死んで謝るのよ〜!!」

天気を外した事がない親父…。

「親父? 嵐が来るのを知ってたんだろう?」  【完】


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