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蒼い殺意
【純文学 その他小説】

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蒼い殺意-2

彼の生活費の明細はこうである。家賃、4,800円。半端な額であるが、200円は家主の好意だと言う。そして、3,000円を昼食代として弁当屋に支払う。2,000円の夜学の学費を払い、月賦の3,000円を払うと、4,800円残る。日曜日ごとの食費が、重くのしかかる。

朝と昼兼用の食事を、喫茶店でのモーニングサービスですませる。250円である。月に4回として、1,000円。そして夜の食事、これが大問題だ。弁当屋に交渉してみたが、だめであった。仕方なく電気ポットを購入し、インスタントラーメンを2袋食べている。

後、電気・水道代が、大体1,200円ほど。お風呂代もある、・・・要するにギリギリである。聡明なる読者諸兄にはおわかりと思うが、貯金にまわるお金は皆無である。

夜学の始業時間は、五時半である。そして、四十分間ずつの授業である。六時十分が彼の夕食の時間である給食時間となる。二十分間という限られた時間で食べ終えなければならない。六時半には片づけることになっている。

彼の町工場の終業時間は、五時である。工場から学校までは、バスで十分で着く。残業を一時間行ったとして、バスの時間は六時十分しかない。おわかりいただけるであろうか、給食時間は終わっている。その為、三ヶ月の間、給食抜きであったこれは辛い。食べ盛りの十七歳だ、猛烈にお腹が空く。

しかもである、翌日の朝食用のパンの問題もある。クラスの中には必ずパンを残す者がいて、彼はそれら残り物のパンを持って帰るのである。それが遅刻となるが故に、持ち帰ることができない。

空腹を我慢できない彼は、恥を忍んで調理室に赴き、残ったパンを貰いに行った。土下座をせんばかりの懇願に、調理員のおばさんも規則をねじ曲げて応じてくれた。私も付き合わされたので、これは紛れもない事実である。まったく哀しい事実である。


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