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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(後編)-40

「そっかぁ…」

さくらは、大量の血を失ったせいで、体に力が入らなかった。彼女が頭をほんの少し上げれば、そこには彼女の仲間達が、涙に濡れた微笑を称えて彼女を見つめているのが分かっただろう。

「よかった……」

彼女は再び目を閉じた。それが安定した回復のための眠りだということが分かると、生き残った沢山の戦士たちは静かで、優しい笑い声と、安堵のため息を漏らした。



8月21日、晴天の朝7時。

戦いは集結した。





黷が滅びたそのビルの屋上には、この戦いで使われたすべての武器(鎌鼬の鎌だけは除かれた)が納められた。

この地を清め、二度と、黷のような者がこの世に生まれることがないように。



「短い付き合いだったけど」

大和の振るっていた刀も、他の武器と共にそこに納められた。

他の戦士たちと同様、大和も、自分の武器に別れの言葉と、そして、この地を守り清めよという命令を告げた。大和の隣では、沢山の小さな侍達が、甲高い声でおいおい泣きながら、自分の刀との別れを惜しんでいた。カジマヤがそれを見てあきれたように声をあげる。

「井守たちよぅ、ちょっと大袈裟過ぎやしねえか?」

その光景に、大和は微笑み、ボロボロの刀の柄にそっと手を置いて言った。



「俺、いい使い手だったかな」

――天晴れ!

朗らかな声が、力強く響いた。

――天晴れなり!国津神、そして人間よ!

刀から返ってきたその言葉を聞いたものは、大和一人ではなかった。驚いて顔を上げた戦士たちは目を見張り、そして歓声を上げた。

清らかな風が吹きぬけ、荒廃した戦場を吹き渡ってゆく。

「見ろ、あれ」

「うわぁ…!」

戦士たちが目にした光景は、人間達には奇跡と呼ばれ、そうではない者達には神業と呼ばれることになる。



その日、戦場は一日にして緑の森と林の地に姿を変えた。それはあたかも緑の木々が、沢山の死と犠牲を、静かに地面の下に眠らせておこうと示し合わせたかのようだった。清浄な風が緑の地を舞い踊り、潮騒と木々のさざめきが、まるで祝いの歌を歌っているようにも聞こえた。これからその地にふる何十年、何百年という時が平穏であることを約束するような、その時戦士たちの目の前に広がったのは、そんな光景であった。


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