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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(中篇)-12

「どうした!」

駆けつけたのは飃だろう。彼ならためらいも泣く自分を殺す。しかし害はそれどころではなかった。

自分の声はもっとこう…暗くて、ざわざわするような迫力があったはずではないのか?これではまるで…まるで…

「子供が倒れてたの…」

そう。ただの子供だ。だからって、一度言葉を交わした敵―それも、雑魚なんかじゃない―の顔を忘れるか?こいつは馬鹿なのか?

ついで彼の顔を覗き込んだ飃が言う。

「しかし、人間はほとんど黷に吸われたはずだ」

「他の澱みに食べられちゃってたって可能性はない?それを誰かが倒したとか?」

「いや、雑魚が吸い上げた魂は、全て黷に献上しているらしいからな…」

―こいつまで!

害は呻いた。一体どうなっているのか。自分に止めを刺す前にこんな茶番を演じているわけではあるまい。

「どうしよう…ここにおいていくわけには行かないよ…熱もあるし」

「そろそろ次の場所に移らねばならんのだが…」

飃は、海に向ってせり出す小さな半島の様な埋立地の先端に目をやった。その向こうに見える塔に、彼らはかなり近づいていた。

飃は訝しげに子供を見た。

「どちらにせよ、この子供が澱みとかかわっていることは間違いないが…解せんな…」

害は思った。ここで正体を明かせば殺される。逆に今の状態を逆手にとってこいつらにうまく取り入れば、隙を突いて始末することも出来るかもしれない。そうすれば、出来損ないなどと呼ぶものは居なくなる。父の創造する新世界の、輝かしい創立の祖として皆に尊敬されるだろう。

「ぼ…ぼく…」

言葉を発したことに、二人とも驚いて彼を見下ろした。

「あのビルの中で…澱みに飼われていたんです…でも仲間割れがあって…それで何とか一人で逃げ出して…」

話しているうちに、さくらの手が彼の頭の上に添えられた。その手が暖かいことが害にも分かったし、その手が優しいことも、彼を思いやっていることも何故か理解することが出来た。ただ、何故そんな事をするのか、そんな時にどう自分が振舞えば良いのかは分からなかった。

「誰か助けを呼べないかな」

さくらが言う。

「己たちが生きていることは、あの作戦以降誰にも知らせてはならないと言われただろう」

「でも…今から行くところにこの子を連れてはいけないよ…」

飃はため息をついた。


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