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小説・二十歳の日記
【純愛 恋愛小説】

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小説・二十歳の日記-2

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星の流れが霧に閉ざされ、時の流れも止まった今夜、僕は君と歩いている。
・・・それだけで僕は幸せなのに、君は不満だという。そして口づけをせがむ。
触れ合うものは心だけでいい。肌の触れ合いが必ずしも、永遠にしてくれるものではない。それどころか、この僕には、タブー。

君に、ガラスのドレスを着せたい。ガラスの帽子にガラスの靴。きっと、素敵だろう!弱い月の光にきっと、七色の虹に輝くだろう。

どうして君は、夢に酔えないの?昨日を想うでもなく、今日を見るでもない。まして、明日のことではない。

”夢は、夢よ!”
その通りだ。だけど、君は嫌う。何故?
”ガラスは固いから、靴ずれするわよ!”
これが君の答え。君には、それを嫌がる僕が不思議だろう。

(彼が病院に連れ去られる少し前のことだったよ、この話を聞いたのは。)

クスリを飲み、次第に意識が薄れていく。手首の血管から血がドクドクと流れ出る。 おそらく、耳にまで届くだろうさ。そして、ガス栓からのシューッという吹き出す音を耳にしながら、僕は彼女と語り合う。

”ほら、こんなに血が流れ出て、・・きれいだぜ。”
”シューッだってさ。ピュッピュッと、断続的に吹き出せばもっと面白いのに。”

そんなことを、二人して話すんだょ。・・どうなんだろうね、その時セックスはするものだろうか。それとも、唯手を握りあって、じっと見つめているだけだろうか?・・・・・
今、悩んでいるんだ。

彼は、そんなことを真顔で僕に話すんだ。僕ときたら、そんな彼に羨望の眼差しを、向けていたような気がする。何て素敵な方法を思いつくのだろうって。

もっとも、正直なところ彼が本当に自殺を図るとは思ってもみなかったけどね。一度目の未遂、”量を間違えたのさ。”と言った。二度目には、家族や医師を罵ったらしい。その時の彼の形相、鬼気迫るといった具合らしい。

僕がお見舞いに行った折りは、前回と違って顔色が悪かった。

人間、如何に生きるかを考えるにだよ、色々人は言う。けれども、そのどれもがこじつけだ。僕の結論は、こうだ。
如何に生きるかと考えるから駄目であって、如何に死ぬか―そこに至る迄の道程が大事だ―を考えれば、自ずと道も開けるはずだ。逆も又、真なり!だよ。
けれども、唯考えるだけでは駄目だ。本当に、向き合わなければ。

しかしお母さんの話では、内蔵疾患を苦にしていたとのことだ。一生を病人で過ごして私に迷惑をかける位なら、と自殺を図ったのです。この子は、あなたもご存じの通りとても気の優しい性格ですから、と。

そして又、こんな話も。

“健康であって欲しい。そう思いますょ、確かに。でもねぇ、いざこうなってみると、親としてはやっぱり生きてて欲しいんです。たとえベッドの中に居ても、やっぱり生きてて欲しいんです。それがあの子には伝わらなかったのか・・。それとも・・、これがあの子の復讐だったんでしょうか。母親であるあたしに対する、最後のそして最大の、復讐だったんでしょうか。”

或いは、お母さんの言葉が正しいのかもしれない。多分そうなのだろう。病のことが彼を苦しめ、精神的重圧となり、あの彼の言葉になったと思うよ。そしてその彼はもう、この世に居ないんだ。居ないんだょ、なぁ・・・


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