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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Fanfare 飃の啼く…第25章 -4

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「会うのは二度目だな…八条さくら」

スーパーで宣戦布告をかました、あの黒い目の澱みが話しかけてきた。

「そう…あんたとはね…」
冷静に答えながら、心は悲鳴をあげていた。
―人を、殺したな…
熱いアスファルトから立ち上る血と、死のにおい。
あと数分早くつけたら…。その事実に、心臓を握り潰されそうになる。でも私は約束したのだ、振り返りはしないと。涙を流すのは容易い。膝を折って、遺体をかき抱くのは容易い。難しいのは、目の前の戦いに突き進む事だ。そしてそれこそが、私に求められて居ること。求められるまでもなく、私が選んだ道。
「早く逃げた方が良い」
飃が、少年達に声をかけたが、彼らは首を横に振るか、黙ってカメラを向けた。
「逃げない」
そのうちの一人、無精髭を生やし、小さなカメラを持った人が言った。
「逃げない。オレたちはあんたたちを待ってたんだから」
「じゃぁ、しっかりカメラに収めるんだねぇ!」
立派な体格に似合わぬ甲高い声で、澱みが面白そうに言った。
「こいつらのハラワタが、飛び散る―」

「やめなよ」

今まで何も言わず動かなかった、一番奥の一番小さな影が、不意に声を発した。姿は子供のようにも見えるが、そうではないのだろう。中性的な顔立ちには、暗い影が差し、どんな人間も黙らせることが出来そうな凄みが感じられた。

「あぁ!?おれ達に向かって何意見してくれちゃってんだよ…」

三つの影がいきり立つ。小さな影は物怖じせず、冷静に言った。

「父上は、先に戦で、あいつらと決着をつけるのが望みだ…人間を狩るのは、戦が終ってからゆっくりやれる」

「何ですって…!お前なんか、ついこの間名前を貰ったばかりの、しかも、出来損ないじゃないのさ!」

おカマが子供に噛み付いた。子供は腕組みをしたまま、何処を見ているとも分からない目で、確かに三つの影の向こうの、私達の姿を見ていた。私も、その目を見返す。しかし、その瞳の奥には、真っ暗な深淵があるばかりだった。

一瞬の沈黙の後

「やめよう、見苦しいところを見せるものじゃあない…」

不意に、スーパーで会った澱みが言った。

その声で、今にもこちらに向かって来るかと思った澱みはそれで殺気と勢いを失った。オカマが肩をすくめて続く。
「そうねぇ。何だか興ざめしちゃったわぁ」

「ムツ!てめえまで!」
ひょうきんがいきり立ってオカマに噛み付く。
「人間は何人殺したって良いけど…狗族にはまだ手を出しちゃ駄目だって…父さんが言ってたわ」
「何でだよ〜!ここで会ったが百年目だ、殺してえよぉ〜!」
「此処にくることを許されなかった者たち皆が我慢してるんだ。私たちだけ抜け駆けしちゃあ…だめじゃないか。イツカの言う通り、後でゆっくり戦えるだろうさ…」
その言葉に、ひょうきんな奴は大人しく身を引いた。さっきの狂ったような高笑いも懇願の喚きも剥がれ落ち、澱みらしい無表情さがとって変わった。


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