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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Fanfare 飃の啼く…第25章 -3

「逃げ遅れが、一人、二人…まだ四人も居るのね…」

黒く濡れたような髪を足元近くまで垂らした、男女が嬉しそうに言った。軽く見積もっただけでも5キロは有りそうな斧を軽々と振って見せながら、ひょうきん男が言う。
「どう思う?そんな役立たずの脚が必要だと思うか?」

答えを求められた、すらりとした細身の男が言った。一番聞き苦しくない声だったが、毒を持つ華の濃厚な香りを連想させる、ねっとりとした話し方をする男だ。

「いいや…要らないのではないかなぁ」

くっと歪んだその目は墨で塗りつぶしたのかと思うくらい黒い。不自然な黒い瞳には虹彩も瞳孔もなく、ただ黒いのみだ。

「じゃぁ伐っちまっていいよな、1本ずつ、ざくざくってよ!」
影が、大きな“斧を持ち上げた。
「一人、ひとつだ」
死が、あまりに近くに迫り過ぎたためか、山本は恐怖を感じなかった。このまま死んでしまうなら、南の島に旅行に行ったときに素敵だと思った洋服、我慢しないで買っておけばよかった。と思った。しかし―
「俺たちの脚の使い道を勝手にきめてんじゃねえよ!」
信じがたいことに、化け物に向かって声をあげた人間がいた。彼女の前に立っていた二人だが、まだ若かった…高校生か、大学生くらいにしか見えない。一体どういうつもりでここに来たのか…その少し後ろでは、その子の連れと思われる青年が、四つの影をハンディカムで順番に写していた。
「使い道ぃ?なにさぁ、そんなもんがあるなら、言ってみな」
オカマみたいなやつが、興味をそそられたのか身を乗り出して聞いた。

命知らずの少年は、更に続けた。
「俺は、俺たちは、お前らが滅んで消えちまうところを最後までこのカムに写さなきゃいけねえんだ!こんなところで足をちょん切られてたまるかってんだ!」
―何を、言ってるの…?
けたたましい笑い声がまたも響いた。
「だったらどうする?その小さな箱で俺たちをぶん殴るのかよ!言っとくが、お前らみたいなちっぽけな人間を助けにクル奴なんかいやしないぜ!いるとしたらそいつは大馬鹿野郎だ…宇宙一のな!!」

―風が
「誰が宇宙一の大馬鹿野郎だって?澱み!」
山本も、カメラマンも、目を疑った。

今、少年のカメラが映しているのは、剣を携えた一人の少女。そして、一人の男。不快な笑い声の途切れ途切れに、澱みと呼ばれたらしいあのひょうきん男が言った。
「間違って、ねえだろおがよぉ〜、八条、さくらぁ!!」
「野郎はともかく、馬鹿に馬鹿って言われた所で、痛くも痒くもないんだよ!」
少女は言った。
―風が、吹き抜けた。


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