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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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mare-6

そんなことはどうでも良い。おれたちは、何かまずい商法に引っかかったんじゃないかと不安を覚えた。しかし、理性は働いている。変なツボを目の前に出されても、絵画を紹介されても、びた一文だって出すもんか。田舎のお袋なんか、「オレオレ詐欺」に引っかかりそうになったけど、大丈夫だったんだぞ。そして俺はその息子だ。絶対に騙されないぞ。

「えっと…」

「あの、黒いものの正体を聞きに来たんでしょ?」

丸っこい顔のほうが、顔に似合うころころとした声で聞いてきた。

「あ、ああ、うん…」

「座れ」

隣の強面に勧められて二人と向かい合わせにイスに座る。もう一人の強面、住職はおれ達をこの部屋に突っ込んでさっさとどっかへ行ってしまった。

もう一度オレが「あの…」と言おうとした時に、目つきの悪いほうが言った。

「名前は?」

「えっと、俺は真田謙一、で、こっちが河野肇…」

「で?何が知りたい?」

当然彼女達も名乗ってくれるものと思っていた俺は少々面食らっていると、隣の巻き毛の子が言った。

「だめだって野分(のわき)、そんな喧嘩腰じゃ、せっかく話を聞きに来たのにビビッちゃうじゃない」

やんわりとたしなめた方に噛み付いた女の名前は、どうやら野分と言うらしい。女の名前としても、人間の名前としても変わっている。

「はぁ?うっせぇし。じゃあお前が話せ、小夜(さよ)」

だって話させてくれないんだもんねぇ、と小さな声で言った方が小夜か。その言葉の通り、野分はさっさと話し始めた。

「あたし達は、もう何年も澱みと戦ってんだ。知りたいことがあったらなんでも聞きな」

「澱み?それがあの黒いのの名前…?」

“なのか”で締めたら良いのか、“ですか”のほうが良いのかわからずに語末をはぐらかしたが、そんな事はお構いなしなようだった。戦ってる、という表現は気にならなかった。実際、おれ達はこの目であれと戦っている人間を見たのだから。

「あぁ。名前を知らないってことは、神社の中には居なかったんだな?」

「ああ、ネットで見つけた動画を見てきただけだから」

そして、隣で珍しく黙ったままで居る相方を小突いて、カメラを出させる。

「俺たち、大学でUMAの研究サークルやってるんだ。あの黒いの…澱み、だっけ?それを見つけてこいつで撮影したいんだ」

電源をつけると、今までに撮った動画のサムネイルが一覧表示された。


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