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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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―でも、確かにいるのだ。

これだけの数の人間が、同時期に、同じ条件で、別々の場所で似通ったものを撮影することはまず無い。これは本物だと、おれ達は直感した。そして、部屋でうだうだしているだけだった俺たちの夏が、不意に意味を持ち始めたのだ。

それからと言うもの、毎日あらゆる動画サイトをチェックし、夜になれば目撃例のあった付近を歩き回り、聞き込みをし、あの謎の物体との邂逅を追い求めた。

そして、がったがたに手振れした映像の中でそれと戦っていたやつらとの。



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まるで、乾いた浜辺で夕暮れを眺めていたのに、気付いた時には波がつま先を洗っていた時のような静かさで。

夜の海の、水とは思えぬほど真っ暗な波に呑まれでもしたような恐怖を伴って。

冬の黄昏が、瞬く間に夕闇に取って代わるかのような速やかさを以て。



かの“樹”は、都市の地中に見えない根を張り巡らせながら、地上に芽吹く日を心待ちにしていた。砂抜きをしている蜆(しじみ)が口を開けるのを、上から焦(ぢ)っと見つめる、あの貪欲で真摯な期待をこめて。

―もっとたくさんの。

―もっとおおぜいの。

その日が近いことを、“樹”は承知していた。

どす黒い種は、どす黒い根を伸ばして、今この瞬間も一人…そしてまた一人。気付かれないように、そっと。

しかし、もうすぐ。

もうすぐだ。



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「すいませーん」

応答がない。

「葬式でもやってんのか?」

相方が言った。

「まさか。だって何にも音がしねえじゃん。木魚とか、経とかさ」

「ほら、今燃やしてる最中なんじゃね?死んだ人をさ」

「アホか。火葬を寺でやるかよ!」

太陽が照っているわけでもないのに、空気だけはいっちょ前に夏だ。打ち水された砂利敷きの地面も、寺の敷地内に生えた木も、暑さを緩和してはくれない。むしろ蝉の鳴き声がいっそう近くに聞こえて、暑さをさらに演出してしまっている。インターホンを2回押したが返事がない。寺と隣接した、家の方のインターホンを押すことに最初は躊躇したが、寺のほうにはインターホンがついていないし、勝手に上がりこんでいいものかどうかわからないのであえて家のインターホンを押したのだ。


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