涙目テディベア-5
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「……あれ？」
「どした、水澄？」
「いや、なんかさ……」
店内を見て回ったり、たまに遊んだりして３０分程が過ぎた頃。
そろそろ出ようかと思い、出口に向かっていた……の、だが。
出口付近で私の足は止まった。それに続いて吾妻も止まる。
「どした？なんか面白いモノでもあったか？」
「……………」
私の視線の先には、一台のＵＦＯキャッチャー。
中の景品は、色とりどりのテディベア。
吾妻も、私の視線の先にあるモノに気付いたようだ。
「あー、ＵＦＯキャッチャーね。中は……クマのぬいぐるみかぁ。ふーん、いろんな色があるんだな」
「今ね、見えたのよ……」
「へー……って、はい？何が見えたって？」
怪訝そうに聞き返す吾妻に、私は今見た事を告げた。
「クマが、泣いてたのよ……！」
「………すまん、よく意味が掴めなかったんだが」
「そのままの意味よ！」
帰り際にふっとみたゲーム機のガラスの中。その中にいた一匹のクマの目が、キラリと光ったのだ。
……そう、まるで涙を流しているかのように。
「いや、それは光が目に反射しただけ……ってオイ。どこ行くんだ水澄」
「両替！100円が無くなったのよ」
「100円……ってなんだ、やるのか？このゲーム」
「もちろん！泣きながら助けを待ってるその子を救い出すのよ！」
間違いない。
あのつぶらな瞳が、目が合ったときにそうメッセージを送っていたのだ。
『僕をここから出して！』――と！
ここで助けずにいる理由があるだろうか？
……いや、無い！
などと最近漢文の授業で習った反語形で意志を高めつつ、100円玉を手にいざクレーンへ。
「水澄、こういうの得意なの？」
「ううん。ほとんどやったこと無い。けど友達がやってたのは何回か見てる！」
「そりゃまた何と言うか……幸運を祈る」
「ラジャー！」
そして、私の挑戦が始まった………！