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細糸のような愛よりも
【同性愛♂ 官能小説】

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細糸のような愛よりも-5

「綿貫って、麻木と知り合いなんだな」
「お前も知り合いみたいだったな、少し驚いた」
知り合いっていうか、クラスメイトだから。
俺が言うと、綿貫はふうんと鼻を鳴らして水の入ったコップに口をつけた。
「まともに話したのは初めてだけど。改めて見ると、凄い美人だな」
「だろ?」
俺の言葉に綿貫が言う。
「いいね、ああいう――表情のない美人」
「好みのタイプ?」
「俺は綺麗なモンが好きだから」
モンて……人はものじゃないんだから。
とは思うが、口には出さない。
付き合っているわけではないのだろうか。
少し気になったが敢えて聞こうとはせず、俺は適当に相槌を打つと、パラパラとメニューを捲った。


七百円のハヤシライスは美味くてボリュームがあった。
綿貫のおかげで三割引ということもあり、学生の俺からしたら腹も財布の中身も満足だ。
「何だかんだで優しいんだな、麻木」
帰りながら俺が綿貫に言うと、奴はそうだなと短く言った。
そして若干日の暮れた空を見上げていた綿貫は、制服のポケットに入れていた手を不意に抜くと、その手をまじまじと見つめた。
「?」
俺が疑問符を浮かべて首を傾げると、綿貫は言った。
「っかしーな。定期、此処に入れておいた筈なんだけどな」
「ないのか?」
綿貫は頷いた。
「部室かもしれねえから、行ってくるわ」
そう言って、学校の道へと向かう綿貫に、俺は声をかけた。
「部室、鍵かかってるぞ」
「でも、俺このままじゃ帰れないから」
「部室当番で鍵持ってるから、俺も行くよ」
仕方なく、俺は溜息混じりに言う。
すると綿貫は悪いな、と一言。
「鍵貸してくれるだけでいいんだけど」
「お前に貸したら、今度いつ返ってくるか分からないだろ」
冗談と皮肉交じりに俺は言う。
「確かに」
綿貫は否定するでもなく、笑った。
自分で言っておいてなんだが、鍵を返しに来るくらいはしろよ、と思う。
「悪いな」
すまなそうに言う綿貫に、俺は首を横に振った。
素直なんだよな。
俺は思う。
見た目がこんなで、実際中身も適当な奴かと思えば、決してそんなことはない。
この外見と中身とのギャップが、この男に親近感を持てる理由なのかもしれなかった。


鍵を開け、扉を開く。
薄暗い部室に俺は明かりをつけた。
だらだらと歩いていたせいか、学校へ戻ると辺りは随分暗くなっていた。
夏休みだからか、グラウンドには生徒の姿は一切見えない。
綿貫は部室の窓から見える外の様子を眺めていた。
「見つかったのか?」
「いや」
綿貫は短くそう答え、やはり外を見つめていた。
俺は少し怒ったふうに言う。
「探さなくていいのか?」
「此処には、ないからな」
そんな綿貫の言葉に、俺は鼻白んだ。
「ない?」
それじゃあ喫茶店にでも忘れてきたのか。
俺がそう言う前に、部室の明かりが消える。
「!」
綿貫は低い笑い声を漏らしていた。
「綿貫?」
何が何だか、分からない。
俺をからかっているのだろうか。


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