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細糸のような愛よりも
【同性愛♂ 官能小説】

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細糸のような愛よりも-13

第五話 快楽が欲しい

「映画、楽しかったね」
久しぶりの毛利とのデートだった。
しかし本来なら楽しい筈の、彼女と見る流行の恋愛映画は、今の俺にとっては退屈なものでしかなかった。
それよりも早くその身体を抱きたいと、否、快楽を得たいと俺の心は急いていた。
最近は誰かと肌を合わせていないと身体が疼いて堪らなくなる。
綿貫でなくてもいいから――無論、奴が相手であることに越したことはないのだが――とにかく抱きたい、抱かれたいと思うようになっていた。
まるで猿並みだと、自嘲する。

そして今、俺と彼女は小さなラブホテルにいた。
部屋の半分以上を占領しているダブルベッドに腰かけ、毛利は俺の肩にしなだれかかる。
「ねえ、聞いてる?」
「ん? あ、ああ」
俺は曖昧に返し、毛利の肩を抱き寄せる。
香水か整髪剤か、甘い香りが俺の鼻腔をくすぐった。
「聞いてるよ」
額にキスをして、髪を梳く。
くすくすと笑いながら首に腕を回してくる毛利は可愛い。
――けれど。
「……毛利」
「何?」
何でもない、と首を横に振る。
そして、俺は唐突に毛利の身体を押し倒した。
「やッ、絹川君、あたしシャワーまだ浴びてな……」
言って俺の胸を退けようとする彼女を強引に押さえつける。
キスをして、舌を差し込んで、唾液を絡ませて。
抵抗を緩めた毛利の姿が、不意にあの時の自分の姿と重なった。

「――あッ、やッ、痛ッ……!」
汗に濡れた肌が、スタンドライトの灯りできらめく。
俺は一心不乱に毛利を突き上げながら、泣き顔のような表情を浮かべる彼女の喘ぎを聞いた。
「も、少し……優しくッ、ああッ」
――俺もこんなに乱れたのだろうか。
「やだぁッ、もうッ……だめぇ……!」
――無理やりにされながらも、こんなによがって、泣き叫んだだろうか。


『――も、やだ……ッ』
『その顔、余計犯したくなる』
あいつのベッドの上で突っ伏せられ、耳元で囁かれる。
涙に塗れた俺の顔に、綿貫がローション塗れの指を近づけてきた。
そして、その指は耳を塞ぎたくなるような淫猥な音を立てる。
『興奮してんだろ?』
綿貫は言う。
『こんなに張り詰めちまったら、痛えよな?』
言いながら、制服の上から俺の股間をまさぐった。
『部室の時みたいに素直になれよ。すぐに楽になれる』
『ん……ッ』
綿貫は後ろから俺を抱きすくめると、開いた胸元から手を滑り込ませてきた。
胸板を撫ぜる、冷たい、ぬるついた感触。
奴が手を動かす度に、濡れた音が立った。
『止め……ッ、制服、汚れる……!』
『着たままの方が興奮する』
さらりと言い、そのまま手は下へと移動する。
器用な手付きでベルトを外し、ファスナーを下げる。
『あうッ!』
そして、俺のものを掴む。
それが既に硬くなっていたのを確認すると、綿貫は意地悪く笑った。
『素直じゃねえなあ』
綿貫は言って、俺の身体を反転させた。
仰向けになった俺の目尻から、つう、と横に涙が零れる。
泣き顔と上がった息。
それは一層綿貫の興奮を煽ったようだった。
唇を貪って、舌を絡めながら、入り混じった唾液を嚥下する。


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