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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第24章-7

「わたしやエエンレラの管轄は、昔も今も神が多くおわす方角だよ。だけどそれにしても少なすぎる。油良のやつは、本当に全ての国津神に宣戦の旨を伝えてくれたのかしら」

「油良は信用の置ける蛇族だよ。あれほどに冴えた力を持つものも居ないだろう…問題は油良ではないのだ」

エエンレラが円やかな太い声で言った。その声には悲しみが篭っている。

「この国から、神歌(かむうた)が聞こえなくなってしまったせいだ…かつて満ちていた善き氣は薄れ、わずかに残った分さえも、澱みに奪われたとあれば…」

重い沈黙がのしかかった。



その時、その沈黙を鈍く裂いて、かけてくる足音があった。皆が一同に扉に目を向ける。どうやら襖の主との問答は割愛したらしく、スタン、スタンと、勢いのいい音が次いで聞こえ、青嵐のちょうど正面の襖が開くと、跪いた狗族がいた。彼は息を喘がせつつ、一息の内に言った。

「臣、瀛(おきつ)、謹んで申し上げます!たった今、龍族の巣が澱みの襲撃に遭いました!」

どよめきつつ、皆が腰を浮かして狗族を見た。

「幸い被害はそれほどではなく、死者も十に届かぬほどに御座います」

「被害はそれほどではないだと?龍の巣が何者かに襲われたことなど前代未聞ぞ!」

虎落が声を荒げた。

「龍族の長とその一族につきましては、無事に戦乱から避難なされたとの事です」

「颱はいずこにおるか!」

颶が立ち上がった。

「は、弟君は今なお留まっておられますが、澱みどもはほぼ滅されたか、残党を残さず退却を致しました」

皆が立ち上がり、報告に現れた狗族に詰め寄った。次々に、情報を携えた臣下が集まり、報告をした。私も立ち上がり、出来ることならそこへいって加勢したいと思った。しかし、手を上げて騒ぎを鎮めた青嵐は、入り乱れる狗族たちを見渡して、言った。

「俺が今から直接出向く。こういう時こそ礼を欠きたくは無いからな…」

「しかし…」

瀛が言った。

「しかし、何だ?」

青嵐の目つきは鋭い。必要以上に鋭いような気もした。

「は…事態はほぼ収束せんとしております。斯様な協議を中断してまで…」

「それは、このおれが決めることだ」

そして、青嵐は再び集まった狗族に向きなおった。これ以上の言葉を瀛に許さないという厳しい態度だ。

中座した協議が、そのまま立ち消えになりそうだった。皆がいったん席に戻り、閉会の合図を賜ろうという時

「あ、あのっ!」

私は、後先考えずに手を上げた。みんなの視線が注がれる。もちろん青嵐の視線も。

「せ、先日、話をつけた覚の、深山からの頼みごとを、仰せ付かってきました!」

かちんこちんである。目の前に居るのは、あの優しくて、(いつも二言目にはこれが出てきてしまう)適当な颪さんなのに、この場所に居ると、その彼に話しかけることがとても恐れ多いことのように思える。


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