投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 481 飃(つむじ)の啼く…… 483 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

飃の啼く…第24章-4

「1年になる」

飃が答えた。

「壱年とな。どうじゃお嬢さん、わしの見込んだところでは、この男、馬も敬礼する程の…」

飃が咳払いをした。不必要なほどの凄みが利いた咳払いだった。

「おっと、いかん。年を取るとどうもな…」

そして、永遠に開かないんじゃないかと思われた襖が音もなく開いた。

「馬も敬礼するほどの…何?」

私がひそひそと聞くと、飃はすこしだけぶっきらぼうに

「知らなくていい」

と言った。襖のあいた先をもう少し進むと、今度は何の変哲もない襖があり、私たちが進んでゆくとそれは自動ドアのようにすっと開いた。

「わぁ…」

不思議な眺めだった。和式の木造建築で、こんな風なつくりをしている部屋は見たことがない。それは完璧な円形の部屋だった。天井はプラネタリウムのように丸く、球体を切り取って乗っけたようになっている。球の上辺は群青で、針で穴を開けたような星が本当に並んでいた。そのプラネタリウムを囲うように色鮮やかな装飾をされた梁が縁取っている。梁は何層かに重なって階段状に広がり、天井全体を彩っていた。よくよく見ればそこには狗族の呪符で見た文字が並んでいて、何らかの技が天井に施されているのがわかった。

円形の部屋の入り口の、正面には会の頭目、青嵐が座っていて、ここからでもなれない正装に窮屈な思いをしているのが見て取れた。

床は板張りで、床の中心には天井のプラネタリウムを映すように丸く巨大な水鏡があった。床の板はそこから放射線状に張られている。客は、その水鏡を囲んで座ればどこからでも水鏡を覗きこめるようになっていた。

見渡すと、青嵐の横には会ったことが無い狗族が何人か難しい顔をして座っていた。多分、青嵐会の上層部の狗族たちだろう。

彼らの左右には、八長が半分ずつに分かれて座って円を作っている。二つ空いた空席が、飃と私の分だ。他にも、春の神楽祭りで見かけた狗族が何人か。多分、八長の付き添いか何かなんだ。茜が風炎の隣で、私に軽く手を振った。交わす視線が、共犯者のそれであるとわからないようにさりげなく。そういうものたちが集まって座り、自由に会話したり、腕を組んで黙っていたりしている。中央に据えられた水鏡が、客をぐるりと囲む行燈の明かりを背にした彼らを、亡霊のように映しこんでいた。

「これなるは武蔵狗―」

傍らで声を上げた、老齢の狗族を、青嵐が遮って言った。

「真打登場だ!」

この顔ぶれを差し置いて真打とは、いささか無礼なんじゃないかと思ったけれど、回りの狗族たちも同様に、暫し顔をほころばせて私たちを迎え入れてくれた。

「毎度毎度、歳若の癖に顔を出すのは最後だな!」

深刻さを感じさせない、野太い叱責を飛ばしたのは九州の長、ウラニシだ。やっぱり最後だったんだ…私は少しの間目を閉じて気恥ずかしさに耐えた。

「そういうあんたはケツから二番目じゃないのさ、自分のこと棚に上げて」

琴を爪弾くようなかわいらしい声色で、陸奥狗族を束ねる吹雪が言った。


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 481 飃(つむじ)の啼く…… 483 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前