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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第24章-3

「…気取られるな。」

幽かにうなずく。深山さんから頼まれた今回のことは、青嵐(もとい、颪さん)を疑う行為であり、もちろん青嵐会を裏切ることになりかねない。気難しい妖怪のわがままにそこまでのことをする必要があるのか、とは風炎の弁だけど、茜も私も、深山さんに見せられたあの光景を忘れることは出来なかったのだ。あの光景と同じものがこの建物の中にあるのだとしたら―そしてそれが秘密裏に行われているのであればなおさら―それは禍々しい行為だ。とても禍々しい。

「よういらっしゃいましたなぁ」

人のよさそうな金狐だった。細い目で飃を見、その隣の私に目をくれた。

「狗族八長、武蔵の飃様、奥方のさくら様、ささ、こちらへ…。」

金狐は深々と頭を下げ、そのまま振り返って案内を始めた。広い廊下で、私が3人横に並んで手を広げてようやく、両端に触れそうなくらいの幅がある。天井は何処まで続いているのやら…狐火の明かりでは照らせないほど高いことに間違いはなかった。そうして案内されるままに進むと、案内役の狐狗族は曲がり角のところで立ち止まり、その奥を示した。

「こちらで、皆様お待ちで御座います」

「ご苦労」

案内役が指し示した廊下の突き当りには、金の襖があった。襖の前に立てられた行灯に照らされて、そこに描かれた二匹の獅子がこちらを睨みつけている。

「わたくしはこれにて…」

金狐がそう言って、どこへ続くかわからない廊下の曲がり角の一つに姿を消してしまった。

「ねえ」

私はゆっくりと歩きながら言った。

「“皆さんお待ち”って言ってたよね?」

「ああ」

私はうなだれた。神楽のときといい、私達はどうしてこう会合には毎回遅刻してくるのだろう?今回は、べつに…遅れるつもりがあったわけじゃないのに。

私は申し訳なさと、目の前の金の襖の豪華さへの畏怖の念から尻込みしそうになった。それを飃に支えられて、襖の前までやってきた時に―

「その方」

「ひっ」

襖が喋った。後ろにプロジェクターがあるんじゃないかと訝るほど“世間知らず”ではないけれど、絵が話すのは私も始めてみた。超極薄液晶ハイビジョンだか何だかならば、こういう事も出来るかもしれない。それに、颪さんならそういうものを買いかねないかも。

「飃か、久しぶりじゃの。」

獅子の片方が言った。どうやら顔見知りらしい。いや、飃からしたら絵見知り?どうでもいいか、そんなことは。

「はて、めんこい娘じゃ。どなたかな?」

私に話しかけたのか、飃の目を見ると、そうだと言われた。ここは物怖じしている場合ではなさそうだ。私は不思議な襖の住人の視線を受け止めて答えた。

「私は飃の妻で、八条さくらと言います!」

「ほっほほ、器量もいいが度胸もすわっとるの。一緒になってどれくらいかね、ん?」

さっきから片方の獅子ばかりが喋っている。もう片方はむっつりと黙り込んでこちらを見るばかり。


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