投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 498 飃(つむじ)の啼く…… 500 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

飃の啼く…第24章-21

それにしても、見れば見るほど違和感を感じさせる。能力的に、この澱みはせいぜい低級。なのに身体だけは完全体に近いといっていいほどだ。

逆に戸惑うような速度で、一番手前の澱みがこちらに向かってきた。しかも、澱み特有の触手は使わずに素手で、それもチョップでもするつもりなのか、どうどうと、うーうーと声をあげ、手刀をふりあげて走ってくる。

全く、あの白衣の狗族たちの慌て様―狗族どころか、これじゃあ男の風上にも置けないんじゃないの、と思いながらも、七星で腕をきり飛ばそうと身構えた。次で、核があるであろう旨に一突きをお見舞いして、終わりにしようと思った。澱みが痛みを感じるのかどうかは知らないけれど、迅速に終らせるのが私のやり方だ。しかし、腕に切り込んだ七星を、私は信じられない思いで引いた。

「澱みじゃ、無い…」

骨に当たる感触。そして、剣を伝ってくる赤いもの。

「澱みじゃない!」

私は恐怖に駆られた。そして、5体の、何か得体の知れないものに背を向けて駆け出した。



我々が作った…もっと素晴らしいものになるつもりだったのに…失敗ばかりが重なった…



「あれは何なの!!」

結界の向こうにいるせいで、狗族たちの顔は赤紫がかった、妙な色に見える。何人かは恥じ入ったように俯き、あるものは秋声の顔色を伺った。誰も答えようとしないので、私は更に声を張り上げた。

「言え!あれはなんだ!」

数人が、私の声に驚き顔を上げた。長い沈黙の後、消えいりそうな声で、誰かが言った。

「志願者だ…」

とがめるような目線に少々たじろぎながら、背の小さい狸狗族が行った。

「澱みに対して耐性を持った狗族を作れないかと…色々やった…しかし、結局は澱みに侵食されて、ああなってしまった…」

狗族は、力なく首を振った。

「我々も尽力したんだ。しかし駄目だった。もう正気のかけらも…残っては居ない」

「もう、もとには戻せないの?」

うなずいた。

「ああ」



結界を殴った。一度。力の限り。



―囚われた彼らを、解き放ってください



「よく、見ておきなさい…目を、背けずに!」

私は狗族に背を向け、“彼ら”と向き合った。



何で志願なんかしたのよ。

馬鹿じゃない、あんたたち、みんな馬鹿。

澱みは狗族になりたがって、狗族は澱みになりたがって。

何で

何で!

何でよ!!



―貴方は、優しい子です。


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 498 飃(つむじ)の啼く…… 500 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前