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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第24章-2

「…ここ?」

「ああ。」

こんな原っぱ、何も無いじゃないかというのは早い。何しろ、街中の何の変哲もないビルに鬼がいたり、山奥の洞窟に羅生門もどきを出現させたりすることができる方々と付き合っているのだ。今この瞬間、地面が割れてそこから巨大な街が姿を現しても自分の目を疑ったりしない自信はある。それにしても、ここの空気は清々しい。地面から立ち上る水蒸気のお陰で潤った大気を、深々と吸い込む。あたりは墨と青い顔料で描かれた日本画のように美しい。そして、どこか畏れを抱かせる場所でもあった。飃の身体に寄り添うと、彼は低い声で旋律を刻み始めた。問いかけるような、静かな旋律だった。目を閉じて、少し俯いたまま小さな声で歌う彼は、この風景の雰囲気と凄く調和していた。大きな力の前に許しを求める者…それが飃と、私だ。短い歌の終わりに、飃の手が私の肩に回った。私ははっとして、何も無い青い空間を見る。そこにはぼんやりと光る何かが出現しようとしていた。夜に潜む光りを少しずつ集めるように、徐々に形作られるそれは、紛れもない門。

入門の許可は、その薄明かりの戸の開放を持って与えられた。私はもう一度、カジマヤの言葉を思い出して鼻から深く、息を吸った。

―腹をくくるんだ!

どっしりとした敷居をまたぐと、空気が外と違うのがわかった。気の床の上に足を置いた瞬間―



殺して!



「え?」

後ろを見る。誰かにつけられたのかと、あわてて周囲を見回した。

「どうした?」

飃が、敷居をまたいだまま首をぶんぶん振る私を心配して、軽く背中を押した。青草を踏んでいた私の左足が硬い木の床を踏んだ瞬間、門は音もなく閉まった。

茜が言ってたのはこのことだろうか…。

深山さんが、この青嵐の総本部にあるものを見せてくれた。彼が言うには、それは青嵐会の暗部なのだそうだ。そのために彼が、青嵐会への協力を拒むほどの。結局、それがなんなのかは最後まで教えてくれなかったけれど、茜が言うには、私にそれを“救って”欲しいということだった。ならば今の声は…。

とにかく、薄暗いこの廊下は、同じく薄暗い何かに繋がっていることは間違いないようだ。

遠くに、ぽっと炎が浮かび上がった。私たちを迎えに来た狐火だ。飃が私の肩に手を置いて、口を動かさないで言った。


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