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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第24章-13

「いいえ」私は言いました。

「貴方と、貴方の子供に興味があります」

すると彼女は、ふと微笑んだのです。

この私に。

「よかった」と彼女は言いました。

「あなたは誰?」

「ご存知でしょう。私は、私達は世界の穢れと滓の塊…名前など無いのです」

彼女は、私の言葉に何を感じたのでしょうか…私がとり憑いた人間の手を取り、そして…私に、名前をくれたのです。



私は、彼女のことをほかの仲間にも漏らさず、自分だけの秘密としました。私は、自分以外の存在と何とか共に生きる道があるのではないかと、その方法を模索しようとしました。しかし、私の意見に賛同するものは少なかった。私の意見と対立するものたちは、神族の生気を吸い、人間の穢れを喰らい、力を増してゆきました。自分達を脅かそうとするものは、芽のうちに摘んでおこうと、彼らは神族の村を幾度となく襲ったとか。このことがそのものたちに知れてしまっては、彼女は無事に子供を生むことができなくなってしまう。

彼女も、私のことは誰にも話さなかったと思います。もちろん、狗族の夫にすら。理由を聞く気にはなりませんでした。私は彼女の姿を見ることが出来るだけで満足だったのです。穢れ如きが何を言うかと、貴方はお笑いになられますか。しかし、彼女はまるで、私も彼女の家族であるかのようにお話をしてくださったのですよ。

定期健診に病院にやってくるたび、彼女の中の光はいやまして眩しく輝くようでした。私はこっそり彼女の胎に触れ、命の鼓動を感じました。一方、狗族の呪いは早くも彼女の体を蝕み始め、持病と相まって、彼女はどんどん衰弱してゆきました。

ある日、彼女は私に言いました。もうすぐ、子を授かって十月に届こうという時でしたが、彼女は病院のベッドにおりました。私は傍らで、彼女にこう申しました。

「私の集めた生気を、貴方にお譲りしましょう」と。

それは、彼女の助けになりたい一身で私が覚えたものでした。そうです、他人の生気を穢すことなく身体の中に保つことは不可能ではありません。他のものたちはやってみる気にもならないから、知らぬだけです。彼女は乗り気ではありませんでした。他人の生気を奪ってまで、自分が生きながらえることは良い事だろうかと、彼女は正直に私に言ってくれました。

「貴方の命に危険が及ぶということは、貴方の子に危険が及ぶということです」

そういうと、彼女はようやくうなずいてくれました。私は、他の人間から少しずつ集めた生気を彼女の身体に送りました。窓から見えている木々が、美しい葉を広げてゆく季節でした。それから数日の後、ついに彼女に陣痛が起こったのです。

私は言いました。

「これでおわかれです」

折しもその時、我々の同属、とくに私と対立するものたちは、噂になっている神器の申し子を捜すことに血眼になっていました。私がここに留まる理由を勘繰る者が出てくるのも、時間の問題でした。彼女は最後に私の手を握って、こう言いました。


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