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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第24章-10

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私は思い切って、七星を携えて転がるように、まだ騒がしい部屋から飛び出した。

「どこへいくんだね?」

という襖の声は、私の耳に届いた時にはかなり小さくなっていた。

見覚えのある柱が目に入る。実際に私が見たわけではない…この記憶を手渡してくれた深山氏の記憶である。私が彼の助力と引き換えに今回のことを引き受けた時に渡してくれた記憶だった。

この角を右…次を左…かなりの広さだ。行き止まりというものがまるで無く、大小さまざまな広さの部屋が、碁盤の目のように網羅された廊下に規則正しく並んでいる。真っ暗な廊下を突き進むのは怖くなかった。気配を感じると灯る不思議な明かりが、ついては、消えてゆく。

息を切らしている暇は無い。

自分でも何をしようとしてるかわからないのに、足が勝手に動いてしまう。何かが、私の訪れを求めている。記憶の道順を辿るほどに、それは私を急きたてた。

―早く、もっと早く。

左、そして三つ目の角を右に…

―早く!

狗族の気配は無い。しんと静まり返った洞窟のような廊下には、私の足音だけが聞こえている。けれど、脳裏で誰かが私を急かす。

―私は、十年以上もこの時を待っていた、もっと早く!

「私、短距離型、なのにっ!」

私は長距離走ではいい成果を出せない人間なんだということを、対面したら先ず伝えてやろうと思った。しかし、十年以上待った?私が待たせたのだろうか。

早く、逢いたい。

二つ目の角を左、また左。四つ目の角を右…

―ここだ!!

靴下が擦り切れて、むき出しになった足が板の間できゅっと音を立てた。身をかがめて、息を整える。耳を澄ましたが、だれがの足音も聞こえなかった。

「ここ…ね…」

目の前にあったのは、他の部屋の入り口となんら変わりのない引き戸だった。息を整え、深く息を吸う。頭の中の声も、もう消えた。

勢いよくあけた瞬間、感じるはずの無い感覚が私を襲った。


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