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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第23章-10

背後で引き戸が閉まる音がした。少なくとも、他の人の避難は終ったようだ。もし澱みがしつこく追おうと思えったなら建物の中に入る事だってできるだろう。でも、わかっている。やるらがここへ来た本当の目的は、人間の魂ではないことは。

神社仏閣の襲撃がニュースで報道されだしたのはつい最近のことだ。とくに神社については、小さな規模のところがもう38箇所以上襲撃されている。澱みは狗族や妖怪のみならず、神社に祀られる神々の力をも削ごうとしているのだ。今回、青嵐会からの要請でこの神社に訪れたのは、澱みの襲撃から深山氏を守るという理由もあった。もう一つの理由は、もちろん彼の説得だけど…。

深山覚義の決断如何によって、迫る戦いの展開は変わる。本人はまだ気付いていないけれど、彼の秘めている可能性は、こんなところで埋もれて居ていいものじゃない…らしい。聞いた話によれば。

澱みが今回この神社に人型の澱みを寄越してきたのは、彼が私たちのほうに着く前に、その可能性を潰す気だからだろう。そして潰させないのが、私の役目。



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「外へは出るな!」

広い神社の中は、不安げに声を上げる人々で溢れていた。先ほどのような混乱はもうないが、ざわめきは収まらず、状況のわからない建物の中にいることで、いっそう恐怖が増していくのが、覚義には手に取るようにわかった。人々がなるべく遠ざかろうとしている玄関の引き戸に手を伸ばす照善に、覚義は厳しい声をかけた。

「しかし…あの小娘がまだ外に…」

人々を庇う様に、彼は板の間の中央に立っていた。

「あいつらが持ち込んだ災難だ。自分で片を付けさせる。」

「あれは…何なんじゃ…」

力なく、照善が言った。

「あんなものは、見たことがない…」

「…あれは“けがれ”が具現化したものだよ。」

板の間が静まり返った。意図したわけではなかったが、いまや建物中の人間が覚義の言葉に耳を傾けていた。

「けがれ…人間の“不浄”を意味する穢れのことか?」

覚義はうなずいた。

「どんな人間にも生活している限りは穢れることなく生きることは出来ない。穢れは自然に生きていれば必ず身体に蓄積されてゆく。祓いや禊(みそぎ)を行えば穢れを祓うことはできるが…そういうもので浄化仕切れないほど、この世には悪いものがあまりに満ちてしまっている…。」

「それが、具現化してアレになったと…?」

真偽を問う声は無かった。雨雲のつれてくる匂いの中に雨を感じることが出来るように、あの禍々しい物体の正体が、不浄なものであることは皆が実感していた。信じるしか、無かったのだ。


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