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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The kiss and the light-22

そんなある日―

「おとうさん、死んでなかったの!」

彼女にとって、行方も、生死すら分からなかった父親の存在は酷い重荷だったのだろう。父親からの手紙が来た時に、彼女は電話口で嬉しそうに言った。

父は、呪いのことすら知らなかったのだと、彼女は言った。しかし、今は体調が思わしくなく、医者からは余命を宣告されている。そんな折、死ぬ前に一目会いたいと、かつての恋人のことを聞いて回っているうちに、娘の存在を知ったそうだ。

そして、会いたいと。

「迂闊に会うな」

と、俺は言った。

「今の仕事が終ったらそっちに行く。俺も一緒に居てやるから、そしたら父親と会えばいい」

彼女は二つ返事でOKした。よほど嬉しかったのだろう。自分が殺人者ではないと知って。

杞憂だ、と俺は思おうとした。呪いを受けた子供の親が、そんなに長命であるはずが無いのだが…しかし、そもそもこの呪法に俺たち以前の例はあるか?あったとしても、記録など残っちゃいない。もしかしたら、偶然今まで生き延びた可能性だってある。だとしたら、いつ死んでもおかしくない状態のはずだ。今生の別れが迫っているというのに、再開を妨げる権利が俺にあるのか?彼女の幸せのために、俺は杞憂であると思い込むことにした。

どうしても仕事を離れられなかった俺は、彼女の血を使って、お守りを作った。彼女の血に宿る、系譜の匂いを覚えこませた守りだ。父親以外のものが彼女に触れようとすれば、例え俺でも、身体の3分の1に酷いやけどを負う可能性がある。すなわち、生死に関わる重症を負うのだ。そこまでのことは彼女には伝えなかったが。



そして、彼女は“父親”に会った。

変わったことも無く、再開は無事に終った。“父親”が持ってきた旅行のパンフレット。“父親”とのツーショット写真。望んだ全てが叶った。

「よかったな」

警察署内の休憩所で、眠い目をこすりながら電話をした。

「うん!飆にもよろしくって!」

嬉しそうに、父との再会を話す彼女の声は明るくて、初めて会ったときの寂しげな影はどこにも潜んでいなかった。

「いろいろありがとう、忙しいのに、気を使ってもらって…」

彼女は、電話口でそういった。

「気にするなよ。おまえは妹のようなもんなんだから」

彼女はそれにも、嬉しそうに笑った。その時、オフィスから中谷の呼ぶ声が聞こえた。

「飆!急いで来て!」

俺は手を上げて答え、言った。

「じゃあ、切るよ。また電話する。めぐりにもよろしくな」

「うん。ありがとう!」



中谷が俺を呼んだ。

俺が美桜の護衛につけた、警察官が自宅で死んでいたからだ。

体中の内臓を抜かれて。



ありがとう。それが、彼女の最後の言葉だった。

“飆にもよろしく”

氷の刃のように、それが心臓を貫いた。

渡しておいた魔除けすら、あの男には通用しなかった。


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