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恋の奴隷
【青春 恋愛小説】

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恋の奴隷【番外編】―心の音K[後編]-2

「フヒヒヒヒッッ!ヒクッ!ヒクッ!」
「…ねぇ、いい加減笑うのやめてよ。気持ち悪いから…」

あれから数分経っても、葉月君が笑い止む気配はないわけで。笑い過ぎて、もはや笑っているのかなんなのか分からない気味の悪い声を上げている。

「ヒヒヒヒッ…ぜぇはぁ…ヒヒッ…ぜぇはぁ」

頬にちょこんと浮かび上がったえくぼが可愛いな、なんて思っていたのもつかの間、息遣いまでおかしなことになってきているわけで。疲労感をたっぷり浮かべちゃって、綺麗な顔が台無し。

「ほら、水でも飲んで落ち着いて!」

クレープ屋さんでコップ一杯のお水を貰ってきて、それを葉月君に飲ませてあげた。店員さんの哀れんだような視線が痛い。

「ゲホゲホッ…」

むせて咳込む葉月君の背中をさすってやりながら、水を流し込ませると、ようやく笑いは収まったようで、私はほっと胸を撫で下ろした。

「あー良かった。やっと止まったわ。普段笑わないくせに、一度笑い始めると止まらない、って…」
「いつも笑わないから余計だよ。溜まってたもんがドッカーンって爆発する、みたいな」

一息付いて呆れたように私が言うと、葉月君は頭をしんなり地面に垂れて肩を落としながら溜め息混じりにそう言った。

「ははっ、何よそれ。じゃあ普段から少しずつ笑う練習していこうよ、私も手伝ってあげる」

にこりと笑いながらそう言うと、葉月君は一瞬驚いたように目を少し大きくして私の方を振り向くと、また地面に視線を落とした。

「どーしたの?」

首を傾げてそう問い掛けると、葉月君は慌てたようにベンチから立ち上がって、スタスタと歩き始めてしまった。

「ちょっ!いきなりどうしたの!?」
「べ、別に…もうデート終わり。帰る」

―な、なんて自分勝手な奴…。

すっかり呆気に取られてしまったけれど、早足で前を行く葉月君に、私も小走りで追いかけた。

駅に向かって歩いていると、お昼休みのOLさんだとか、サラリーマンでちらほらと人通りが増えてきた。大学生くらいの恋人達は手を繋いで、ニコニコ笑いながら歩いている。彼女の歩幅に彼氏は合わせて、とても幸せそう。
それに比べて私は葉月君の速さに付いていくのにいっぱいいっぱいで。どう見たって付き合ってるようには見えないだろうな。

「わっ!」

そんなことを考えながら、大学生カップルを目で追いつつ歩いていたら、葉月君の背中にぶつかってしまった。

「夏音、遅い」
「そ、そんなこと言ったってー…」

葉月君はちらりと私の見ていた方に目をやると、不意に私の手を握ってきた。ポカンと口を開けて葉月君の顔を見ると、また前を向いて歩き始めてしまった。私の手を握ったまま―。


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