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Memory
【純愛 恋愛小説】

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Memory-4

『涼介が好き。』
さき程よりも強い声で楓は言った。何かが俺を貫く。想いが溢れて言葉にならない。
『楓…。』
俺は彼女の髪にそっと触れる。セッケンの良い香りを風が運ぶ。
『ごめんね…。』
『え?』
『いきなりこんな事言われても困るよね。だから気にしないで。』
顔をあげた楓は、無理に笑顔を作ってみせる。そして再び目を伏せた。彼女の眼の縁で光る物に俺はドキッとした。
―気にしないで?そんなの無理だ。
俺は楓の手を握る。
『俺も好きだよ。』
俺だってずっとずっと言いたかったんだ。
『嘘?』
楓がガバッと顔を上げて俺を見る。俺は彼女にほほえんでみせた。
『本当。』
―信じられない…といった顔をしてる楓を俺は抱き寄せる。その柔らかい感触に心が震えた。
『夢みたい…』
俺の胸の中で楓が呟く。彼女の光の粒は、俺の服に飲み込まれていった。


『涼介を好きじゃなかったら"あんな絵"は書けなかったと思うの。』
公園のベンチで楓がつぶやく。夕方とはいえ外は蒸し暑い。俺はカッターシャツの裾をパタパタとさせていた。
『よっぽど俺の事が好きなんでしょうね。』
『ばかっ。』
ふざけて答える俺の頭を、楓はバコと殴った。コレがまた結構痛い。
『いってぇ。』
俺はおおげさに頭を抑える。って…ん??何だか楓の様子がおかしい。うつむき加減の彼女は、口を一文字に結んでいた。
『もしかして…照れてる??』
『違っ…。』
楓の顔が紅潮する。メチャクチャ可愛い…。そんな彼女を見ていると、自然と俺の方まで照れてきた。
『…楓。』
腕を引き、楓を抱き寄せる。
『ぇっ…』
"ちゅっ"
唇を離した俺達の視線が絡み合う。突然の事で、楓はますます顔を赤らめていた。
『ばかぁ…。するならするって言ってよ。』
『アホ。"今からキスしますよ〜?"なんて聞く馬鹿がどこにいる。』
俺がそう言うと楓は頬を膨らました。これが彼女の癖らしい。
『ファーストキスだったのに。』
楓が唇をとがらす。
『まじで!?』
そう言った俺を、何故か楓は怪訝そうに見る。
『…涼介は初めてじゃないみたいだね。』
はっとした。確かに俺は過去二人の女と付き合ってきた。しかも一人は半年近く。17歳のカップルが"キス"をしないわけがない。
『否定しないんだぁ。』
楓の表情がムスッとなる。こういう時、何て言うのが一番いいんだろう。
『でも楓が一番好きだよ。』
俺がそう言うと楓はまた頬を紅潮させた。
―実際、それは事実だった。俺は今までの女と比べものにならないくらい楓が好きだった。

公園の空―暗闇が太陽の光を飲み込もうとしていた。
忍びよる闇、地獄のカウントダウンが始まっている事に二人はまだ気づいていない。


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