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Memory
【純愛 恋愛小説】

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Memory-2

『すっげぇ…。』
恥ずかしいけど、でっかい門を目の前に俺の足はすくんでいる。彼女が渡してくれた紙切れによると、確かにこの家…いや、この豪邸が彼女の住まいらしいが、未だに俺はそれを信じることができない。
『もしかして相川様でいらっしゃいますか?』
視界に余る程の豪邸を前に躊躇していると、門が開き、中から使用人らしき女性がでてきた。
『え、あ…はい。』
曖昧な返事を返すと、その女性はほほえんだ。俺はその柔らかい笑顔に、何だかほっとする。
『楓(かえで)お嬢様がお待ちですよ。中へどうぞ。』
お嬢様…か…心の中で連呼してみるがが、何となく実感が湧かなかった。

『こちらです。』
使用人の女性は1階のバルコニーに俺を案内した。バルコニーにはガーディニングが施されており、その一角にある木製のイスに楓は腰かけていた。薄ピンクのカットソーと、くしゅくしゅの白いスカート、黒いストールを肩に羽織っている。その格好が彼女を余計と『お嬢様』に引き立てていた。
『案内ありがとう。』
楓がそういうと、使用人の女性は一礼して出ていった。
『久しぶり。』
えへへっと彼女は無邪気に笑った。
『久しぶり。こんなに金持ちだったとは初耳だ。心臓止まるかと思った。』
俺は笑いながら言ったが、
『特別扱いしないでね?』
と、何だか心配そうに彼女は尋ねた。
『わかってる。人より10倍下手なんだから、ビシバシいくかんな。』
楓の背中を叩きながら笑ってみせると、彼女も安心したように笑った。
『そうこなくっちゃ。でも10倍は余計計よ。』
プクっとふくれてみせる楓の横顔が何だか可愛いかった。

俺が楓の邸宅に通うようになって2ヶ月が過ぎた。今では2日に一度ここを訪れている。俺の苦労のかいもあって、楓の絵も大分マシになっていた。
『おまたせ〜。』
数メートル先で、少女が手を振っている。純白のカッターに赤いチェックのプリーツカート。お嬢な上に可愛い子が多い
と有名な"〇和女学園"楓はそこに通っていた。確かに色白で澄んだ目をしている楓も、一般的にみれば可愛い部類に入ると思う。そして、俺がそんな楓に惹かれているのも事実だった。
『おー。』
俺も軽く手を振り返す。楓の家に行く日は、2人で帰るのがお決まりだった。
『今日水泳が始まったんだよ。』
楓はビニールバックを顔の前でゆらゆらさせた。水着姿の楓が俺の脳裏をかすめる。
『溺れなかったか?』
そんな妄想を頭の中から追い出すかのように俺は言った。
『なにそれ。ギリギリ25メートル泳ぎきれたわよ。今度測定もあるんだから。』
『測定って何メートル泳ぐん?』
『50メートル。』
ダメじゃん。思わず俺は心の中でツッコんでしまった。
『残り25メートルどうすんの?』
『どうって…気合いよ、気合い。』
拳をグッと握ってみせる楓。ハッと俺は吹き出してしまった。メチャクチャだ。
『まぁ、溺れたら俺が助けてやるよ。』
『ダメよ。女学園よ?男子が入ったら警察呼ばれちゃう。』
楓も笑いながら言った。


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