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ウソ
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ウソ×B-5

「お互い嫌われたもんだな」
事務所で一人になったら携帯が鳴って小松が来たんだった。
全部嘘?
じゃああの電話の女の子は?
待受画面の子は誰?
小松の彼女は…
「…何で、小松?」
やっと出た声がそれ。
主任も睦月も何で揃って小松にそんな事…
「あいつは金で動くからな」
また聞かなきゃ良かった事を聞いた。
「松田は人を見る目がないんだよ、男も女も」
「最低…」
「簡単に人を信用するなって事だ」
主任の手が小さくなったあたしの全身を撫で下ろす。
「やっぱ、惜しいなぁ。お前を手放すの」
やだ。
触るな。
やだ。
もうやだ。
みんな嫌い。
大っ嫌い!!!!
「ぅあぁっ」
自分でも信じられないくらいの力で主任を押し退けた。
尻餅をついたその隙に走って事務所を飛び出した。
走っても走ってもうまく地面を蹴られない。
さっきの小松のダルそうな声や主任の楽しそうな声、昼間の睦月の笑顔が、ごちゃごちゃ混ざった塊になって追いかけてくるみたい。目に見えないそれに飲み込まれたくなくて、夢中で家を目指した。




帰る途中で何度か携帯が鳴った。
最初はその度に壊してやろうかという衝動に駆られたけど、アパートに着く頃にはそれを含めて何もかもがどうでも良くなっていた。
だから部屋の前で小松が待ってるのを見つけた時も、何とも思えなかった。
『♪♪♪♪』
携帯の着信音が鳴る。
その音で小松はあたしに気付いて手にあった携帯を閉じた。同時にあたしの携帯も静かになる。
そうか、しつこく鳴らしてたのはこいつか。
「お前、帰って来るの遅ぇよ」
「何しに来たの」
「いや、睦月がさ、今日松田と主任が話つけるって言ってたから」
「…」
「あの、どうだった?」
「話ついたよ」
「そっか、あ、じゃあ…」
急にそわそわし出す小松に送る視線には、昼間までの熱っぽさはない。自分でも分かるくらい冷め切ったモノ。
「松田?」
「睦月と主任からいくら貰ったの?」
「…は?」
「手間の掛かる真似して、酒飲ませて記憶無くして、合鍵使って部屋に入って、…寝てるだけの女とヤってちょっとは気持ち良かった?」
「何、言ってんのお前」
「あんた達の思い通りに動くあたしを見てたらそりゃ楽しかったでしょうね」
「松田、あのな」
「あんたと話す事なんか無い」
「聞けって」
「帰れ」
「いいから聞け!」
両肩を掴まれてまっすぐ見つめられた。
冷め切ったって思ったのに、小松の手が触れた瞬間、涙が溜まり始めた。
こいつの前では泣きたくない!
その一心で腕を振り払った。


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