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ウソ
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ウソ×B-4

「でもヤった後が面倒だったろ」
「服を着させるってやつ?」
「あいつ、裸で寝るの嫌いなんだよ」
「へぇ…」
あたしの事なら何でも知ってるみたいな言い方。
二人の話を自分なりに必死に理解しようとしてもうまくまとまらない。どのみちあたしにとって良い話では無いのは分かった。
膝を抱えてその場にうずくまった。他に防衛手段が思い浮かばない。
嫌だ。
何も聞きたくない。
聞きたくない聞きたくない聞きたくない!!
『シューッカタカタカタカタ』
「!?」
何、何の音!?
膝を抱えたままゆっくり音の方へ目をやると、火にかけたままだったヤカンが大騒ぎしてる。
最悪…
あの二人にあたしがここにいるのを知らせてるようなものじゃない。
隠れる場所もない。逃げ道もない。ただ小さくなって震えているだけ。
徐々に近付いて来る足音はあたしの横を素通りしてコンロの火を止めた。
「何の音ですかー?」
小松の声が響く。
「あぁ、お湯を沸かしてたのを忘れてた」
声はあたしの真横から。
恐る恐る顔を上げると、
「…っ」
笑顔の主任と目が合った。
息を殺してうずくまるあたしに、まるで子供にするように静かにというジェスチャーをする。
なんでそんな顔できるの?
あたし全部聞いてるのに。
それを知ってるくせに…
主任はまた小松の元へ戻って、言った。
「俺がお前に頼んだのは松田と別れさせやすくしてくれってだけだぞ。誰が本気で惚れさせろって言った?」
「頼まれたんですよ、たまたま同じ時に」
「頼まれた?」
「松田と主任を別れさせたいって」
「誰に」
その問いに、小松は焦らすように間を置いてから答えた。
「睦月」
「…っ」
倒れてしまいそうな衝撃が体を突き抜けた。
睦月?
睦月って、あの睦月…?
「なんだ、睦月か」
「心当たりがありそうですね」
「あぁ、あるな」
「何したんすか」
「大した事じゃねぇよ」
「どうだか」
そう言われて、主任はくっくっと小さく笑った。
「睦月から松田に乗り換えただけの事だ」
気が遠くなる。
睦月…、純粋にあたしを心配してくれてるんだと思ってた。
でも違った。
あたしに主任を盗られたのが許せなかったんだ。だからあんなに別れろって言ってたんだ、小松を使ってまで…
完全に耳を覆った。
一番信頼してたのに、本当の友達ってこんなんかなって真剣に思ってたのに…
「!?」
頭に何か触れる。
「小松、帰ったよ」
その声にゆっくり顔を上げた。
「…」
言いたい事はたくさんあるのに声が出てこない。
それを知ってるのか、主任はいつもより饒舌だった。
「ま、そーゆう事だ」
ポンポンと頭を撫でられる。嫌だけど、今はそれを払い除ける気力すらない。
「転勤する前に別れようと思ってな、すんなり別れるには松田に浮気でもして貰うのがいいかなと」
…何で笑って言えるの?
「お前、後半の話聞いてたか?」
微かに首を横に振った。
「小松の携帯を一緒に探したんだってな」
「…」
「あれは睦月が仕組んだらしいぞ」
「…っ」
嘘だ。
だってあの日睦月は休んでいなくて、それで…、あたしが残業する事になって…


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