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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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笹沢瀬里奈の悩み 〜Love trouble〜-8

「お門違いもいいとこね!自腹切ろうとしてたのをなんだかんだ言って引き止めて金払ったのは、あんたでしょ!?」
「う、うるせぇ!!ありゃお前が払わないと付き合うの考え直すって……えぇい!!」
 痛い所を突かれたのか顔を赤くしつつ、山科は叫んだ。
「ガキのくせに偉ぶりやがって!!おい、出番だぞ!!」
 その声に応じ、山科の近くからぞろぞろと人影が現れる。
 その人数は、六人。
 ――全員、男。
 龍之介が、緊迫感の満ち始めた場にふさわしくない笑みを浮かべた。
 女性がいないのなら、恐れるものは何もない。
「ここで出て来るのは……笹沢さんを引き渡せ、かな?」
 ずいっと一歩進み出た龍之介は、山科を含めた七人を睥睨する。
「秋葉。三人を安全な所まで護衛して。ここは僕が引き受ける」
「おいちょっと待て」
 言われた秋葉が、不満そうな声を出した。
「何でお前一人なんだよ」
「お前が喧嘩するのはまずいだろ」
 龍之介が反論する。
「ふざけろ。俺の方がでかくて強ぇんだから、残るのは俺だろうが?」
 秋葉は腕を曲げ、力こぶを作ってみせた。
 けっこう大きい。
「あ?僕の方が腕力も握力もあるぞ」
 それが面白くなかったのか、龍之介は左眉を吊り上げる。
「腕も足も、リーチは俺が上だ」
 言い募る秋葉へ、龍之介は反論した。
「お前は馬鹿でかいだけだろうが。身のこなしは、僕が上だ」
「あんだとぉ!?」
 憤慨した声を聞いた龍之介は、唇だけを微笑ませる。
「分かったら行ってくれ」
「ふざけんな!!」
「ふざけてるのはそっちだろ!」
 緊迫した状況をほったらかしてぎゃあぎゃあ喚き始めた二人の事を、一堂は唖然として眺めていた。
 ――つまり、山科を含む男達も。
 そして二人は、その隙を見逃さない。
 アイコンタクトも、必要なかった。
 女の子を三人も抱えた男が二人。
 対するのは、七人の男。
 数的有利に胡座をかいて油断していた七人は秋葉と龍之介の即席タッグにより、いきなり四人が沈められてしまう。
 つまり。
 素早く一歩踏み込んだ龍之介は手近な奴と擦れ違いざま首に一撃を加えて昏倒させ、もう一人には腹に掌底を一発叩き込んで沈黙させた。
 龍之介のように護身術の手習いをした事のない秋葉は自らのリーチを活かし、自分の肩くらいまでしか背丈のない男二人の首根っこを引っ掴むや、おでことおでこでガッツリ挨拶させてやってから放り投げたのである。
「何だ、意外と歯ごたえのない相手だな」
 屈強なボディガード数人と激闘を繰り広げた経験のある龍之介ならば、数が頼みの素人集団は分が悪過ぎた。
「人間の体って、意外と柔らかいなぁ」
 秋葉が、感心した口調で呟く。
「秋葉……任せた」
「OK」
 侮れない相手だとようやく悟った残りの三人だが、遅きに失していた。
「あんたの相手は、俺だとさ」
 秋葉が一人を引き受けた事を視界の端で確認し、龍之介は二人と対峙する。
「な……なあ」
 山科が、不意に声を出した。
「もしかしてお前、瀬里奈のコレか?」
 言って、親指を立てて見せる。
「は?冗談じゃない」
 いかにも心外そうに龍之介が即答すると、山科は眉をしかめた。
「じゃあ何で、瀬里奈を守るんだ?瀬里奈を守ったって、一文の得にもならないんだろ?」
 龍之介はちらりと二人を見ると、秋葉の方へ視線を走らせる。
 秋葉も相手も攻勢に出るタイミングが掴めないのか、互いに攻めあぐねた表情をしていた。
 相手はそれなりに場数を踏んでいるらしく、体格差を考慮しても勝率は五分五分といった所だが……情勢は、場数を踏んでいない秋葉にやや厳しい。
 一瞬でそこまで読み切ると、龍之介は笑みを浮かべてみせる。
「僕は、知り合いを売るような下衆な根性は持ち合わせちゃいないんでね」
 足を緩く開いて構えを取ると、二人の顔が引き攣った。
「ちゃんと話し合う様子もなさそうだから、邪魔させて貰う」
 言って龍之介が派手に踏み込む素振りを見せると、山科を含む二人は思わずガードの姿勢を取る。
 二人が硬直したその隙に、龍之介は秋葉が担当していた男を片付けた。
 派手なフェイントをかけられた形になる二人は、唖然とする。
「残るのは君達二人だけど……まだやる?」
 あっという間に五人もの味方を片付けられた山科は、龍之介の言葉で生存本能なるものを思い出したらしい。
「お……覚えてろっ」
 迫力のない台詞を吐くと、あたふたと逃げ出した。
「あ……待ちなさい!」
 逃げ出した山科を、瀬里奈が呼び止める。
 女の子達は今の今まで人質に取られたりしないようにと、後退していたのだが……。
 山科は、瀬里奈の声を聞いて足を止める。
「分かったわよ。一回ヤれば気が済むんでしょ?だったら、ヤッて終わりにしましょ」


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