投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

過ぎ去りし日々
【その他 恋愛小説】

過ぎ去りし日々の最初へ 過ぎ去りし日々 80 過ぎ去りし日々 82 過ぎ去りし日々の最後へ

還らざる日々〜last〜-9

───


 カーテンの隙間から差し込む朝日に目覚めた一生。
〈ハッ〉としてベッドから飛び起きて時計を見た。午前9時。

「いかん!完全に遅刻だ」

 部屋のドアノブに手を掛けた途端、自分が会社を辞めたのを思い出した。
 ゆっくりと後ずさりしてベッドに腰掛ける。1週間になるが、未だリズムはそのままだった。

 自室から出ると人の気配がしない。台所のテーブルには〈お友達と山菜取りに行きます〉と書かれたメモ用紙が置いてあった。

「相変わらず元気なオバサンだ…」

 テーブルの上や冷蔵庫の中を探したが、朝食の用意はしていない。
 仕方なく、有り合わせの材料で朝食を作った。
 かなり遅い朝食を食べながら、夕方の事を考える。

 聡美と会えるのだ。一生は、何故か緊張している自分に気づいた。たかが1週間ぶりなのに。

 食事を終え、後片づけをすませてシャワーを浴びた。
 風呂から上がると時刻は12時過ぎ。そろそろ聡美が列車でこちらへ向かう頃だ。

 新しい部屋着に着替え、テレビでも眺めて時間を潰そうとリビングに向かった。
 ちょうどプロ野球の開幕戦を中継されていた。昔、野球をやっていた彼にとって、うってつけだった。



 中継は試合途中で終わった。時刻は午後3時。
 到着まで、まだ2時間以上ある。チャンネルを替えてみたが、ろくな番組が無い。

(…仕方ない。駅でぶらぶらして時間を潰すか)

 彼は服を着替えてバイクで出掛けて行った。




 けたたましい音と共に、6番ホームに青い車体の列車が入って来た。
 一生は階段近くで下車する人々に目を凝らしていた。
 人の河が彼のそばを流れていく。そして、ひとりの女性が列車から降り立った。

(…聡美だ!)

 思わず顔が紅潮する。

 一生は流れに逆らい、人をかきわけながら彼女の方へと向かった。

 聡美は荷物が重いようで、足元がおぼつかない。後から追い越す人々とぶつかり転びそうになる。
 その度に立ち止まり、何とか階段へと向かおうとしていた。
 だが、またぶつかり、今度こそ本当に転ぶと思った瞬間、誰かが身体を支えてくれた。
 聡美はゆっくりと顔を上げる。前には、一生が白い歯を見せていた。

「…一生…」

「おかえり!」

 2人が1週間ぶりに再会した瞬間だった。


過ぎ去りし日々の最初へ 過ぎ去りし日々 80 過ぎ去りし日々 82 過ぎ去りし日々の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前