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過ぎ去りし日々
【その他 恋愛小説】

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還らざる日々T-12

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 夕方。〇〇そばの駐輪場にバイクを停めた一生は、そこから50メートルほど先にある地下街入口の階段へと向かった。

 10月末ともなれば昼間はかなり暖かいが、日が沈むと同時に急に肌寒く感じられる。

 一生は灰色の長袖シャツに黒のライダース・ジャケット、黒のジーンズといういでたちだ。

 腕時計に目をやった。6時10分前。
 彼は、ゆっくりとした足取りで地下街への階段を降りていった。

 約6年前に作られた地下街は地下鉄開業と同時にオープンした。
 北はダ〇〇ーから南は〇〇までの〇〇通りの地下を、そっくり通路兼ショッピングモールとしたのだ。
 服飾、雑貨、飲食店が通路に連なっている。
 景観は19世紀のヨーロッパをイメージして、壁面は赤レンガ、直線で2本並ぶ通路は石畳と凝った作りだ。

 通路の両サイドには各百貨店の地下に通じるようになって非常に利便性まで考えられた作りとなっていた。

 一生も出来た当初、その当時付き合っていた彼女と祭りの後に訪れた。

 その時、地下街を見に行こうと言ったが、折りしも台風が直撃して影響をモロに受け、逃げ込むように地下街に入って難を逃れた経験があった。

 あれから6年経つが、人の喧騒ぶりは相変わらずだった。
 階段を降りた一生は、右に曲がって進んだ。突き当たりにロ〇〇〇アがあり、その左どなりが〇〇だ。

 ここは元々ケーキ屋だが、買ったケーキをその場で食べるスペースもあり、おまけに飲み物も置いてあるので若い娘達に人気のある店だった。

 一生がドアを開けて中に入ると尚美はもう来ていた。
 奥の席に座りこっちに向かって手を振っている。

「遅っそいやんか〜!ウチ10分も待ったわ」

「まだ6時5分前だぞ。オマエが早く来過ぎなんだよ」

 尚美は溢れんばかりの笑みを向けた。それは一生の内心を、ときめかせるモノだった。

「うそ。今日はありがとう」

 頭をペコリと下げる。

「それじゃ行こか」

「うん!ドコ連れてってくれるん?」

「中華は?」

「うん。ええよ」

 2人は席を立つと、地下街を南の方へと歩いて行った。



…「還らざる日々」?完…


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