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一夜
【姉弟相姦 官能小説】

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一夜-3

ふいにドアの閉まる音がした。私はうっすらと目を開けた。どうやら眠ってしまったらしい。
壁の向こうから物音がしない。さっきのドアが閉まる音は安里だろうか。どこかへ出掛けたのかもしれない。私はベットから起き上がって台所に向かった。
お湯が沸騰するのを待って、お気に入りのピンクのマグカップをテーブルに置いた。珈琲でも飲んで少し落ち着きたい気分だった。
「姉さん……」
振り返るとリビングに上半身裸の安里が居た。
「いたの?」
安里は何も言わず近くにあったシャツを頭から被る。裸という事は部屋にいたんだろう。じゃあさっきのドアが閉まる音は女が帰ったのか。私は隅にある冷蔵庫にもたれて、今火にかけたばかりのやかんを見つめた。
この一年程の同居生活で、私達は殆ど接点を持たなかった。生活リズムもバラバラ、会話も一言、二言、全く顔を合わせない日も少なくない。
安里は何の為にここへ来たんだろうか。このままで私達は本当に幸せになれるんだろうか。
「安里、もうやめようよ」 やかんが口から白い息を吹き出す。
「止めるって何を?」
「もう出ていってよ」
自分の声が震えてるのが嫌なくらいよく分かった。私の後ろにいるであろう安里の存在が恐くて堪らない。
「俺は姉さんの傍にいたいだけだよ。邪魔はしない、傍にいたいだけだ」
「だから、それが邪魔なのよ!」
振り返ると、目の前で安里が私を見下ろしていた。いつからこんなに背が高くなったんだろう。
「姉さん」
安里が私の肩に触れる。こうして間近で触れられると、今までに起こった出来事が走馬灯のように甦る。
「触らないで!さっきの女にもそうやって優しくしたの?」
しまった、と思った時にはもう遅かった。安里は私の身体を抱き寄せ離そうとしない。
一瞬この腕の中に落ちてしまうと思った時、お母さんの言葉が脳裏を掠めた。『異常』と。私は安里から逃れる為に必死で手足をバタつかせる。
「離して!安里が出ていかないなら私が出ていくわ!」
「姉さん危ない!」
安里の叫び声と同時にフローリングに何かが叩きつけられた。咄嗟に覆った手をゆっくり下ろすと、足元にやかんが転がっていた。
「姉さん怪我は?」
身体の隅々に目を凝らす安里。私を庇ったせいか、腕が少し赤くなっている。
「私はいいよ。それより赤くなってるじゃない」
私は安里の手を振り払い救急箱を取りに行こうとした。
「待って」
「え?」
ふいに安里が私の指に舌を這わせた。雄の眼で私を見つめながら何度も指を往復する。背筋に電気が走る。
「ちょっと赤くなってたから」
そう言って私の指を解放する安里。
もう止めてよ、一緒にいたって切ないだけなのに。安里がいなくても生きていかないといけないのに……なのに、安里のする事ひとつで、私はたやすく溺れてしまう――。
「馬鹿!何にも分かってないで……私はあなたの姉なのよ!」
安里の頬を殴る。次に胸板に向かって拳を叩きつける。
「このままじゃ私達、本当に駄目になるわ!お父さんもお母さんも……みんないなくなっちゃう。だから私達、見つかる前にもう終わりにしなきゃいけないのよ……そうじゃなきゃ」
滲んで前が見えなくなる。気がつけば私は安里を押し倒していた。安里の頬に私の涙が落ちる。
「そうじゃなきゃ、姉さんは幸せじゃないのか?」
殴る余裕はもう無いのに、私は悲しみに任せて手を上げる。するとその手を安里に掴まれた。
「……分からないわ。もう嫌なの、疲れたのよ。なにもかも忘れたい」
安里の腕は高校生の頃とは違って、いつの間にか私よりも身体も大きくなって、目を見ると男を感じずにはいられない。いつの間にこんなに大きくなってたんだろ、安里。いつの間に、こんなにあなたの事を好きになってしまったんだろう――。
「忘れたいのに……こんなに好きなのに。どうして弟なのよ……!」
その瞬間、安里は私の頭を掴み、強引に引き寄せる。逃げようとしても追ってくる唇。両手で頭を押さえ付けられ身動きがとれない。


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