投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 209 やっぱすっきゃねん! 211 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!Ulast-21

「…ね、姉ちゃんが藤野コーチとノックやって…そしたら倒れて。でも、大丈夫だからって…」

 澤田家。ひと足先に帰った修は、藤野からの伝言を身振り手振りも混じえて伝えようとするが、気持ちばかりが焦って上手く伝わらない。


「だから、佳代はどうしたの?」

「と、とにかく!もうすぐ藤野コーチが連れて来るから」

「アンタ、バカねぇ!それを先に言いなさいよ」

 加奈はバタバタと藤野を迎える準備を始めた。




「ヘッ?…ここは…」

 真っ暗な天井。前方のわずかな窓から流れる光の帯。

「気が付いたか?」

 佳代は声のした方をそっと見た。
 わずかな明かりから一哉だと分かった。

「私、ノックを受けてて…」

 身を起こそうとしたが動かない。その上、身体中に痛みが走った。

「…ああ、スマン。オマエが気を失ってたんで、シートベルトをきつく締めてるんだ。もうすぐ着くから辛抱してろ」

「着くって何処に?」

「オマエの家に決まってるだろ」

 その瞬間、佳代はシートベルトを解除して起き上がる。

「私の荷物や自転車は?学校に置いたままですか」

「心配するな。永井監督が積んでくれたから」

 一哉は親指で後方を指差した。1台の1ボックス・カーが付いて来ていた。


 ほどなく、2台のクルマが澤田家の前に止まった。
 加奈に修、それに健司までもが佳代を出迎えた。

「…あぃ…痛てて…」

 全身ドロだらけ、埃まみれでクルマから降りてきた佳代。

「姉ちゃん!大丈夫か?」

 修は心配気に腕を掴んだ。途端に顔をしかめる佳代。

「いっ!痛いぃ…さ、触るな…」

「先にお風呂に行きましょう」

 佳代は加奈に連れられ、ヨロヨロと家の中へと向かった。
 健司は荷物を自宅へ、一哉と永井は自転車を裏庭に置いた。


〈ちょっとお茶だけでも…〉


 健司の誘いに、一哉と永井はリビングに通された。

「初めまして。父親の健司です」

「こちらこそ初めまして。野球部監督の永井です」

 お互いがぎこちない挨拶から始まった。
 一哉は、健司に対して、事の経緯を話した。

 健司は黙って聞いていたが、やがて小さく頷くと口を開いた。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 209 やっぱすっきゃねん! 211 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前