投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

過ぎ去りし日々
【その他 恋愛小説】

過ぎ去りし日々の最初へ 過ぎ去りし日々 7 過ぎ去りし日々 9 過ぎ去りし日々の最後へ

還らざる日々〜Prologue〜-3

 彼女との出会いは共通の友人からの紹介だった。
 一生の中学時代の同級生が同じ専門学校に通っていた。

 最初、一生は乗り気ではなかった。
 ただ、男の方から断るのは失礼だと思ったので、2〜3度会って断られるようにすれば、彼女を傷付けずに済むだろうと考えていた。
 だが、聡美と会い、彼女の事を知る度に一生はどんどん惹かれてしまい、彼の方から交際を申し込んだのだ。


「もしもし?」

 聡美の声で、一生は現実に引き戻される。

「ああ、考え事をしていた。オマエの声が1番癒されるなぁ…て」

 受話器の向こうが無言になった。

「明日、夜にアパートへ行くよ!そうだな…いつものスーパーでロースカツと野菜を買って」

〈待ってるから〉という聡美の言葉で一生は電話を切った。
 部屋を出て子機を元に戻すと、彼は思い出したように風呂に入った。
 湯船に浸かりながら顔はほころんでいた。




 風呂から上がり、キッチンに向かうと、再び母親から声が掛かる。

「また電話があったわよ。今度は都田さんて女の子」

「都田…なんて?」

「風呂だって言ったら、また電話するって」

 注がれたご飯を受け取りながら、一生は考えていた。

(アイツとは会社での電話で用事は済んだと思ったがな…)

 時計を見ると、午後10時を少し回っている。

(この時刻じゃ今日はもう無いだろう)

 かき込むように夕食を摂っていると、再び、電話が鳴りだした。
〈きっと都田さんからよ〉と言う母親の言葉に、一生は飲んでいた缶ビールと子機を取った。

「アンタ、あれこれ手ぇ出すんじゃないのよ」

 自室へ向かう一生の背中に母親の声が掛かる。
 彼はぶっきらぼうな口調で〈分かっとる〉と言って部屋に入った。

「ハイ、浅井ですが」

「アーッ、やっと出てくれた!こんな遅くにゴメンなさい、どうしても今日、話したくて」

「どうした?」

「………れへんかな?」

 あまりの小さい声のため、一生は聞き取れなかった。

「聞こえないよ。もっと大きな声で言ってくれ」

「もう1回…会われへんかな?」

 一生は言葉に詰まった。

 確かに彼女と飲んで楽しかった。それに誘ったのも自分だ。
 しかし、それほど意識してなかった。

 それに、自分には聡美がいる。
 しかし、会社の電話で言った手前、断るのは失礼だ。


過ぎ去りし日々の最初へ 過ぎ去りし日々 7 過ぎ去りし日々 9 過ぎ去りし日々の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前